「ほめ方が下手な人」に共通する残念な考え方 自分目線を基準にしていたら相手に届かない

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相手のことが少しずつわかってきたら、次は相手の立場に立って考えてみましょう。これを私は「相手軸」と呼んでいます。心の軸を自分から相手に移すというイメージでしょうか。

難しく聞こえるかもしれませんが、主語を「自分」から「相手」に変えれば理解できます。「自分がどうしたいか」ではなく、「相手が何を考えているのか」「何が好きなのか」「どうしたいのか」です。ほめるときは、相手が本当に大切に思っていることを、自分も大切に思いながらほめることが重要です。

相手を思いやり、そのこだわりを「すごい」と思いながらほめれば、ほめ言葉の魔法はかかりやすくなります。最近の人は、自分の大切にしていることは大事にするけれど、相手が大切にしていることについては関心を持っていない傾向にあることを、私は懸念しています。相手が大切にしていることが好きだとか嫌いだとかではなく、相手が大切にしているのなら、まず自分も大切にしなければならないのです。そこが、すべての始まりでなければなりません。

ほめ言葉をかけるときに、もうひとつ心掛けたいことがあります。それは「行動をほめる」ということです。「優しい」と思える人に「あなたは優しいね」というのは、正解の1つです。

その行動を具体的にほめるということ

でも、もっと伝わる言い方があります。それは、具体的にほめるということです。

「あなたの人を思いやる気持ちが優しいよね」

この言い方だと、きっと相手はもっと喜ぶでしょう。「私のことを、しっかり見て、ちゃんと評価してくれている」と思ってくれるはずです。

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たとえば、「さっき山田さんが怒られているとき、あなたは勇気を出して上司に本当のことを伝えていたよね。山田さんが間違っていたのではなく、上司が勘違いしていたんだ。周りの人も、そのとおりだと思っていたはず。こうしてチーム力がついていくんだね」。

ここまで、伝えられたらベストでしょう。誰にだって長所はありますし、ほめられたいと思っています。その長所を見つけられたら、何が、どうすばらしいのか、伝えましょう。

「あなたは、こんなにすばらしい人なのです」、その言葉に感動しない人はいないでしょう。行動をほめるということは、その行動に至るまでの相手の考え方や人間性を肯定することだからです。そのためにも、普段から相手のことをよく見ましょう。そして、「この人には、こんないいところがあるんだな」と気づいていれば、いつでもすばらしいほめ言葉で伝えることができます。

原 邦雄 ほめ育財団 代表理事

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はら くにお / Kunio Hara

ほめて人を育てる「ほめ育」を世界に広げるために日本だけではなく、アメリカ、中国、インド、カンボジアなどでも活動を展開。ハーバード大学やザ・リッツカールトンホテルでのセミナーをはじめ、年間200回以上の講演を行う。テレビ朝日「報道ステーション」やNHKにも登場。「一般財団法人 ほめ育財団」を設立。http://ho-make.com/

 

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