山形から世界へ飛翔
次代を担うグローバルリーダーを育てる
山形大学 フロンティア有機材料システム創成フレックス大学院

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
文部科学省が2011年度から行っている博士課程教育リーディングプログラムには、全国の大学による63のプログラムが採択されている。一昨年、その中間評価を行ったところ、山形大学のフロンティア有機材料システム創成フレックス大学院は、最高評価を得た。次世代のグローバルに活躍するリーダーを育てようという山形大学のこのプログラムには、産業界からも強い期待が寄せられている。

入学半年後には英語で研究発表を

文科省による博士課程教育リーディングプログラムは全国から63のプログラムが採択されているが、前年度の中間評価で最高評価を得たのは、わずかに3プログラムのみ。このプログラムは、オールラウンド型、複合領域型、オンリーワン型という三つのタイプに分かれるが、オンリーワン型で最高評価を獲得したのは山形大学だけだ。

山形大学大学院 准教授
東原 知哉

山形大学のプログラムは、修士課程と博士課程を5年間の一貫教育ととらえ、有機材料の分野で高度な専門知識を修得したうえに、創造性と主体性を備えた博士人材を育てるのが目的だ。毎年12人の定員で学生を募集し、選抜試験に合格した学生は全員授業料を免除されるだけでなく、月額15万円の奨励金も支給される。そのうえ大学から徒歩5分の寮は、寮費が3万7000万円で、そのうち1万7000円は大学が負担するというから、驚きの好待遇だ。

「勉強に専念できる環境を整えようということで、アルバイトも原則禁止と規定しています。実際にはアルバイトをする必要はありませんし、する余裕もほとんどないでしょう」。山形大学大学院有機材料システム研究科有機材料システム専攻の東原知哉准教授が言う。

実際、カリキュラムを見ると、相当ハードな内容だ。入学した年の秋には、学生主体で運営される国際会議の場で、自らの研究について英語で発表しなければならないし、2年次以降ではその運営自体をしなければならない。しかも国内企業へのインターンシップと学術雑誌に論文投稿をしたうえで、創造性と主体性を問う試験(QE試験)にパスしなければ3年次には進級できないし、その試験を受ける前に実施される予備審査に合格しなければその時点でこのプログラムからはドロップアウトすることになる。

世界で初めて量産販売された、高輝度・長寿命の照明用有機ELパネル及び山形大学有機エレクトロニクスイノベーションセンターで開発が進むフレキシブル有機ELパネル

一方、無事QE試験にパスすれば、他分野の研究室で一定期間、研究に取り組んだり、希望すれば学外で研究活動するなどの体験が待っている。もちろんこれらはすべて専攻した専門分野の学究をこなしながらのことである。

海外インターンシップも必修

さらにこのプログラムで特徴的なのは、3年次以降に長期海外インターンシップが用意されていることだ。海外の企業の研究所や研究機関に短くても1カ月、長い場合は1年間行って、海外企業の研究者などに交じって研究活動に取り組むのである。しかも、このインターンシップは、行き先の選定やインターンシップ申し込みの手続きなどもすべて学生が自分で行うのが原則だ。

「本学は、世界の様々な大学や企業などとのネットワークを構築していますが、その中に限らずどこに行くかは学生の自由です。事務局はサポートしますが、ビザを取得するために先方から許可証をもらう手続きや、インターン受け入れの契約書を交わす作業などは全部英語で学生自身にさせます」(東原氏)

国立科学博物館・企画展にて、本プログラムの学生が山形大学の展示物を説明している様子

外国人ばかりの中に1人で放り込まれて、一人前の研究者として研究し、所定の成果を上げることが求められるのだから、これは相当ハードだ。だが、そうであるからこそ、このインターンシップから帰ってきた学生は皆、一様に大きく成長するという。実際に2015年、このプログラムの学生を1人、インターンシップで受け入れたフランスの大手化学メーカー、アルケマ社の日本法人で副社長を務める宮保淳氏は、こう証言する。「彼の場合、3カ月間に驚くほど成長しました。インターンシップが終了する少し前に1度会いに行ったのですが、自分から積極的に動いていましたし、研究所の内外に人的なネットワークもつくっていました。学生のときに企業の現場を体験することは、とても意義のあることで、当社は今後も山形大学の取り組みに協力していく方針です」

次ページどこへ行っても通用する人材になる