子どもたちが意義を感じられる
学びのために
今の中高生が社会人になるころ、社会はどのように変化しているだろうか。周知のように、インターネットの登場やテクノロジーの発達により、さまざまな産業、職業、働き方に大きな変化が生じている。今後、たとえばAIやIoT、ビッグデータの活用によって、あらゆる産業でIT化が進み、多くの職業がロボットで代替されることになるかもしれない。交通システムなどのインフラも、自動運転が普及すれば一変することになるだろう。
変わり続ける社会の中で変わらずに必要とされ、生き生きと活動し続ける人であるために、時代の変化に応じて、自らが学び続けていく姿勢を持つことは大事だろう。その姿勢さえあれば、柔軟に新たな課題にチャレンジしていくことができるはずだ。
だが、学び続ける姿勢は急に身に付くものではない。10代のうちから、学習の中に面白さを発見したり、社会とのつながりの中で勉強する意義を感じたりする経験が重要だ。
では、そのために教育をどのように変えていけばよいか。現在検討されている高大接続改革や新大学入試も、同様の問題意識がベースにある。そのような中で創立以来、受験にとどまらない本物の学力を身に付けることを目指してきたZ会が、一つの結論を出した。それが、最新のICT技術を利用したZ会の新サービス「Asteria」である。
本質的な学びを可能にした
テクノロジーの活用
Asteriaの特徴を一言で言えば、「学年の縛りがなく、個人の意欲や興味、達成度に合わせて、高度な内容の学習にも挑戦可能な、タブレットによるオンライン講座という学習形態」にある。このように独自性の高いサービスはどのようにして実現したのだろうか。
Asteriaの開発が始まったのは2015年9月。「全国にいる学習者一人ひとりの状況に極限まで対応する方法はないだろうか」という問題意識から研究が進められた。その結果、教育ICTの一種であるアダプティブ・ラーニング(適応学習)の技術を取り入れたオンライン講座「Asteria」が誕生することとなったのである。今年度の開講は3講座。17年3月に「英語4技能講座」「数学新系統講座」、7月に「総合探究講座」がスタートする。そこに込められた思いは「社会で実際に役立つ、本物の学力を届けたい」ということだ。開発を担当したZ会ICT事業部事業戦略課課長の渡辺淳氏はこう語る。
事業戦略課
課長
渡辺淳
「われわれには、受験だけが勉強のゴールではないはずだ、という思いがあります。だからこそ、中高生の勉強であっても、知識を得るだけで終わらせたくないと考えています。困難な課題に出合ったとき、知識のつながりを引き出したり、他者と協働したりしながら解決へと導く力を日々の学びを通して育てたい。そうした学びであれば、子どもたちにとっても勉強が必要な理由が明確になると思うからです。Asteriaとはギリシア語で『星座』を意味します。星が連なって星座となるように、この講座で学ぶことで知識・人・社会をつなぎ、一人ひとりが未来を明るく輝かせられるようにと願ってつけたものです」
Asteriaは、内容理解・問題演習・添削指導などすべての学習がタブレットで完結するようにつくられており、個人の理解度に応じて、一人ひとりが適したスタート位置から学習を始められる。そうした「個への徹底的な対応」を支えているのが、前述の「アダプティブ・ラーニング」の技術だ。
米国Knewton,Inc. 社のアダプティブエンジンを使用することで、学習者が一問解くごとに、理解度やこれまでの学習履歴などのデータに基づき、次に学ぶのに最適な問題を提供していく。タブレットの大きなメリットは、こうした「アダプティブ(適応)学習」ができることにある。もちろん、機械的な学習だけでなく、Z会の特長である「添削指導」も取り入れられている。学習の節目で第三者による添削指導を受けることで、客観的な視点が身に付き、学力の定着が図れるというわけだ。
「すべてをタブレットで完結することで、各個人の学力・学習スピードに応じた課題の提供が可能になります。さらに、個人の解答、指導内容などもビッグデータとして蓄積していけるので、教材の質の向上に活用していく方針です」(渡辺氏)

4技能を重視した英語、
統計にも力を入れる数学
講座の具体的内容をみると、Asteriaの独自性はさらに明瞭になる。まず「英語4技能講座」では「読む」「書く」だけでなく「聴く」「話す」の4技能をバランスよく高めていくことを特色とする。国際標準規格CEFRを日本流にアレンジした「CEFR-J」に基づき、そのレベルごとに「英語でできるようになってほしい項目」をCan-doリストとして明確化。「実際に使える」英語力を身に付けることを目標とする。出題内容もそれに沿っており、実際の日常生活で英語を使う場面を想定し、そこでどのような英語を使えばよいかを考えさせるような内容になっている。
「数学新系統講座」は、学習要素のつながりや覚えやすさを優先したZ会オリジナルの講座体系となっている。基本事項をまず習得したうえで、それを応用する問題に取り組むことで、解法の暗記ではなく、「なぜその方法で解けるのか」という本質を学ぶスタイルだ。さらにIT化など実社会における数字・データの重要度の高まりを踏まえ、「代数」「幾何」「解析」の3本柱に次ぐ4本目の柱として「統計」が加えられていることも大きな特徴だ。社会やビジネスで役立つ「数学を用いた真の問題解決力」を身に付けることが企図されている。
7月にスタートする「総合探究講座」は、「協働学習」「個人学習」「探究学習」の三つで構成される。少子高齢化やグローバル化が進む社会における課題についてオンラインで実際に議論したり、第一線で活躍する人の講義を通じて現代社会の課題について考察を深めたりしながら、コミュニケーションや問題解決に関するスキル・知識も向上させていく講座だ。なお、「探究学習」の第1回のプレゼンターとして、MITメディアラボの所長を務める伊藤穰一氏の登壇が決定しているという。
社会に出てから役立つ力を若い人たちに
Z会は創立以来、受験にとどまらない本物の学力を育てることを追求してきた。その意味でAsteriaは、Z会がこれまで考えてきた理想に限りなく近いサービスだと言える。困難な課題に対してもあらゆる知識を結集して解決の道筋をつける力、いわゆる “21世紀型スキル”とも呼ばれる力を育てるために最適な学習は何かを考え、最新テクノロジーとZ会が蓄積した85年の指導経験を組み合わせて生まれたものが、Asteriaなのである。
Asteriaの事業統括をしているICT事業部執行役員/事業部長の草郷雅幸氏は、その思いを次のように語る。
執行役員/事業部長
草郷雅幸
「今後、子どもたちは、これまでなかった新たな課題に直面することになるでしょう。Asteriaでは、その課題を解決し、21世紀を生き抜く力を養える学習環境、自分の力を社会に生かすという学び本来の意義を実感できる学習環境を提供していきたいと考えています。
これまで日本の教育は、大学入試がゴールとされてきた面があることは否めません。もちろんZ会も受験という場で最良の結果を得られるサービスを追求してきましたが、学習で得られるものは決して合格だけではないはずです。社会に出てから、大人になってから役立つ力を、中高生の日々の学びを通して育てたい。このAsteriaによって、日本の教育を変えていきたい。そう考えています」