安倍自民党の「独走」、実は盤石とはいえない 存在感が増している二階幹事長の思惑とは?

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韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことに対し、長嶺安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事の一時帰国、日韓スワップ協定の協議の中断、日韓次官級経済協議の延期と釜山総領事館員による釜山市関連行事の参加見合わせを発表したのだ。

日本が駐韓大使を召還したのは2012年8月に李明博韓国大統領(当時)が竹島に上陸した時以来で、極めて強い抗議といえる。

「我が国の立場を明確に示した」。菅義偉官房長官は6日の会見で強い不快感を表明したが、2016年12月9日の会見では前年(2015年)12月の日韓合意についてこう述べていた。「政府としては、日韓の間で最終的で不可逆的な解決であるという韓国政府の明確な、そして十分な確約を得ているものと受け止めている」。

韓国への強硬姿勢が持つ大きな意味

つまり日本政府の韓国に対する態度は1カ月で大きく変わったことになる。対韓外交で強硬姿勢に出たのは、対米、対ロ外交の「負け」を取り戻すためと見てとれる。と同時に、解散への準備と見ていいだろう。韓国や中国、北朝鮮との外交問題は、国民の耳目を集めるのにかっこうの材料。強い姿勢を示せば、支持率は上昇する。

すでに2014年12月の衆院選で選出された議員たちは、任期の折り返し点を過ぎている。内閣支持率と自民党支持率は安定している一方で、民進党は代表を替えても振るわない。まさに解散するのにもってこいの時期といえる。

とはいえ、安倍首相には簡単に解散を打てない事情もある。ひとつは東京都議会議員選挙との関係だ。今年夏に予定されている都議選だが、都議選を最重要視する公明党への配慮のため、その前後は解散権は事実上制限される。

小池百合子東京都知事の出方もまた、解散阻害の要因といえるだろう。小池氏自身はまだ自民党籍だが、「小池新党結成」となれば都議選ばかりではなく国政選挙でも、自民党にとって厄介な存在になりうる。その小池氏にすり寄る姿勢を見せる都議会公明党や民進党の動きも注視しなくてはならない。

何よりの懸念は獅子身中の虫だ。自民党内の当選1、2回生は自民党の高支持率の下で当選した。いいかえれば状況が変われば、議席を失う可能性が大きい。

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