狙い目!「おトク度が高い」私立中学はここだ 偏差値やブランド力だけで選ぶのは損

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最後に紹介するのは、いち早く授業後講座や自習室の開設を行なってきた中野区にある共学校の実践学園中学。2011年に自立した学習を促すための校舎「自由学習館」を正門から徒歩1分の場所に土地を取得して建設した。通常授業の予習、復習的な講座をはじめ、難関大学受験対策の講座など、さまざまなレベルの講座を充実させてきた。

 実践学園中学が新説した「自由学習館」の実際

2011年に新設した自由学習館

「自由学習館」と校舎内の学習室を合わせると、自習ができる席数はテーブル席を合わせて410席。本館校舎内、中学高校の職員室近くに設置した「予習・復習学習室」では教科担当教員の指導を気軽に受けることができる。職員室前にも机を設置し、勉強でわからないことが出てきたらすぐに聞ける環境を整えている。

「2つのお得を約束する」と話すのは同校の中高一貫教頭・廣瀬享矢教諭。時間と費用の面でお得感を感じられるはずだと話す。

実践学園中学 中高一貫教頭の廣瀬享矢教諭

「日本にまだ電子黒板ができる前から、板書による授業時間の無駄をなくそうとイギリスで利用が始まっていた電子情報ボードを採用し、授業で活用していました。授業後の講座も予備校へ通う通塾の時間の無駄をなくすために始めました。費用もすべて最初に提示した金額しかいただいておりませんので、経済的にもお得だと思います」(廣瀬教諭)。

「J・スクール」と名付けられた授業後の講座はすべて希望者制。中学生は7時間目、高校生は7、8時間目として毎日講座を開講している。当初は予備校の講師を学校に招いて講座を開いていたが、近年は同校教師が担当している。

十分に席数がある自習室で勉強する学生たち

教える側の教授力の強化を図るため、教師の同校専任率も75%まで上げた。「私学は非常勤講師の割合が多いところもありますが、本校では専念できるため、熱心な教員が多いです。公立校では夕方になると職員室はガラガラという学校もあるようですが、うちは違います。とことん生徒の勉強に付き合います」と廣瀬教諭は力説する。

学費が高いようにも見えるが、事実、これ以外の徴収は部費と修学旅行などの旅費のみ。講座の受講が少なければその分は返還もしてくれる。

学習室の利用は中学生午後6時半、高校生で午後7時まで。かつて高校生の予備校利用率が9割あったが、講座と自習室の稼働後は1割に激減。通うとしても1科目のみ受講など予備校利用率が大きく減った。これに反比例するかのように大学の合格実績は上昇、2004年度に19人しかいなかったGMARCHの合格者数が昨年度は108人まで上昇した。同校の場合、全国大会に出場する部活動も多く、部活と受験の両立を果たして志望校への切符を手に入れる生徒が多いのも特筆すべき点だ。

今回紹介した学校以外にも、都内にはこうした設備を整える学校が増えている。もちろん、どの学校も通常授業が基本だが、勉強はどれだけ時間を確保できたかが勝負となる部分もある。夕方に自宅に帰っても親の目は無く、子どもたちには携帯電話やゲームなどの誘惑も付きまとう中、放課後を安心して預けられ、学力を伸ばしてくれるとなれば、あらゆる意味でお得な学校と言えるだろう。

(撮影:田所千代美)

宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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