4代目プリウスは、なぜ早々に首位陥落したか ハイブリッド車の絶対王者ではなくなった

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販売苦戦といっても1万台以上は統計上は販売しているのだが、その中身も気になるところだ

先代の3代目プリウスは商品の魅力に加えて、強力な販売網を武器に2009年5月のデビューから2010年12月まで20カ月連続で、乗用車車名別販売ランキングの首位に立ち続けた。一方、4代目プリウスはその半分の期間となる10カ月しかトップを守れなかった。もちろん月販1万台超はまぎれもない大ヒット車ながら、新車効果がまだ一巡していない中で意外な展開でもある。いったいなぜなのか。

日産が行ったマイナーチェンジが影響している

まず、日産が11月2日にマイナーチェンジ(一部改良)したノートが大きく台数を伸ばしたことが挙げられる。

東洋経済オンラインが森口将之氏執筆による「日産『ノート』が急にバカ売れし始めた理由」(12月14日配信)で詳しく解説しているが、ノートは発電用のエンジンを搭載し、モーターの電力で走行する新開発のパワーユニット「e-POWER」を導入した。これはシリーズ式と呼ばれるハイブリッド車の一種でもあり、その特性を生かした出足と燃費の良さに加え、コンパクトカーセグメントにハイブリッド車をラインナップしてこなかった日産の空白を埋める存在として、日産ファンへの訴求になっている。

ただ、「2015年度で月販平均約8000台のクルマが、改良発売した月に1万5000台へ登録が増えた理由を、ユーザーへの販売が好調だったということだけで説明してもいけない。別の仕掛けもあったはずだ」という業界関係者の見方もある。それは日産がレンタカーや販売店の試乗車向けにも少なくない数の新型ノートを一気に登録したとみられる動きだ。

筆者はある自動車販売業者から、「11月の統計結果が出たころに札幌ナンバーのノートのレンタカーが首都圏某所の中古車販売店のストックヤードに結構な台数が置いてあったのを目撃した」という情報を聞いている。全国の日産系新車販売ディーラーの店舗数は約2100拠点。これらの大部分の拠点で試乗車1台ずつでも自社登録すれば、結構な数にはなる。レンタカーも試乗車もどの程度の規模で登録されたのかは定かではないが、ノートの初速を上げる材料にはなっているだろう。

一方で、そもそも4代目プリウスの販売が失速気味になっていたという面がある。4代目プリウスが2016年1月から9月の間で月販台数が2万台を割り込んだのは2月と8月だけ。2月は1.9万台なのでほぼ2万台といってもいいだろう。ところが、10月と11月は一気に1.5万台を割り込んだ。11月の販売台数は前年同月比で2.2倍を売ったが、現行プリウスの正式発表は2015年12月。2015年11月はモデルチェンジ直前で在庫もほぼなかった状況だったので、当然と言えば当然の結果で好調さを裏付けるものではない。

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