副都心線の開通で激化 池袋・新宿で過熱 新・百貨店戦争
池袋、新宿、渋谷の3大ターミナルを結ぶ新たな大動脈、東京メトロ「副都心線」が14日に開通した。池袋から先は東武東上線や西武池袋線へ乗り入れるため、埼玉南西部や東京都の練馬区、板橋区から新宿、渋谷へのアクセスが一段と向上する。「初年度で1日15万人、2012年度に控える東急東横線との接続までには30万人に拡大する見込み」(東京メトロ)。新たな人の流れをにらみ、沿線百貨店では大規模な店舗改装が活発化。顧客獲得競争が熱を帯びている。
新線の開通で消費者の利便性が高まる一方、実は最も危機感を強めているのが池袋地区の百貨店だ。主要顧客だった東武東上線、西武池袋線沿線住民が池袋駅を素通りしてしまい、新宿や渋谷へ流れる可能性が高いからだ。
そこで今春、西武百貨店池袋本店は総額300億円をかけて全面改装に着手した。「通りすがり」の客を取り込むと同時に、地元客のつなぎ留めを図ろうとの狙いもある。池袋本店は長年にわたって増改築を繰り返したため、店舗構造が複雑になりすぎていた。「欲しい物がどこにあるかわからないという苦情が最も多かった」(店舗構造改善担当部長の新妻桂一氏)。今回の大改装を機に、売り場の配置を見直し、通勤途中の限られた時間でも買い物をしやすくする。4月に婦人雑貨フロアから着手したのも、こうした“立ち寄り需要”に応えるためだ。
また、ここ数年で20~30代の若い層に偏っていた品ぞろえを団塊世代中心に広げ、特に地元客への訴求に力を入れる。同店の年間来店客数は約7000万人と業界トップクラスの集客力を誇る。平日の客数は約17万人、休日には20万人を超えるが、実際に買い物をするのは現在その4割にすぎないという。「副都心線開通で客数が減少する可能性はあるが、ターミナル立地の優位性は揺るがない。地域客の潜在的な需要も取り込めば十分に補える」(真籠顕彦店長)。
池袋駅の西側に店を構える東武百貨店は、新たにユニクロなどの専門店を取り入れ、食品売り場の改装などで手を打ってきた。新線開通後もさらなる食品売り場の強化を予定しており、ターミナル百貨店としての差別化を図っていく。
そして今回、新線開通の「危機」を受け、西武と東武の両百貨店が手を組んだ。同一商圏ではライバルの両店だが、地域単位の集客を優先させようと、開通初日には共同案内所を設置し、無料のエコバッグも配布。このような形で西武と東武が本格的に手を組むのは初めて。今後はパルコやサンシャインシティなど周辺の商業施設や豊島区とも協力し、池袋のアピールに努めていく方針だ。