地域を支える思いを備えた観光人材を育てる 東洋大学

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東洋大学は、1887年に哲学者である井上円了によって「私立哲学館」として創立された約130年の歴史を持つ総合大学だ。哲学を建学の理念とする私立大学で、近年ではオリンピックでの水泳、陸上、そして駅伝などスポーツ分野での輝かしい実績を残している。一方、2014年には、わが国社会の国際化を牽引する大学を重点支援する事業、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」のグローバル化牽引型に採択され、グローバル人材育成の取り組みが加速している。「世界で存在感のある大学へ」と題したこの企画では、グローバルに活躍できる人材に求められる能力、その育成のために大学や社会がどう取り組むべきかについて、全6回の連載を通して明らかにする。第2回は、2017年4月、東洋大学が新設する国際観光学部の学部長に就任予定である飯嶋好彦教授が、観光庁アドバイザーや各地の観光大使等を務め、地域の観光資源の発掘・発信に詳しい俳優の辰巳琢郎氏と対談。これからの日本の観光が発展していくために必要な取り組みと、求められる人材、その育成について語り合った。
左から観光庁アドバイザーを務める俳優の辰巳琢郎氏、 東洋大学 国際地域学部国際観光学科 教授 飯嶋好彦氏

辰巳 テレビ番組「くいしん坊!万才」のリポーターを務めた1991年から3年間、全国各地に出かけ、さまざまなものを食べ、オリジナリティあふれる発想と熱意を持った多くの人と出会いました。その中で、地方の課題に触れ、同時に底力も感じてきました。そういった地方を応援したいとの思いが伝わったのでしょう、全国各地の観光大使に任命されています。東京一極集中のひずみを是正して地方を元気にするには、経済波及効果のすそ野が広い観光の振興が欠かせません。住民の理解と人材の育成が大切なポイントです。それには大学の観光学の教育と研究が大きな役割を果たすでしょう。

飯嶋 本学は、前回の東京オリンピック前年にあたる1963年、当時の短期大学に日本で初めての観光学科を設立しました。以来、50年以上にわたって観光業界に人材を輩出してきた実績と人脈があります。グローバル化が進む中、2001年に4年制の国際地域学部国際観光学科に移行し、2017年4月には国際観光学科を発展させて新たに国際観光学部を立ち上げます。国際観光学部には、観光産業分野として、旅行産業で求められるマーケティング力や旅行企画能力を学ぶ「ツーリズムコース」、計数や法律にも強いマネジメント人材を育成する「エグゼクティブマネジメントコース」、航空会社やホテルの現場最前線で優れたサービスを提供できる人材の育成を目指す「サービスコミュニケーションコース」、観光産業の現場で実際に働きながら即戦力人材を育てる「観光プロフェッショナルコース」を設け、観光政策分野では、地域、国家、世界の視点から、観光行政特有の課題を解決し、観光政策を具現化できる人材を育成する「観光政策コース」を設けます。

辰巳琢郎
俳優としてテレビ、映画、舞台に数多く出演。食通・ワイン通としても知られ、1991~1993年には「くいしん坊!万才」のレポーターを務めたほか、日本ソムリエ協会の名誉ソムリエ、日本ワインを愛する会副会長なども務める。さらに、観光庁アドバイザー(2011年~)をはじめ、高知県、福島県(会津地方)、山梨県(甲州市)、奈良市など全国各地の観光大使として、地域の観光振興にも貢献している

辰巳 それはすばらしい。国際観光学部での学びは、観光を現場のサービスとしてとらえるか、経営・経済、観光政策の視点で取り組むか、アプローチによってさまざまな学び方ができそうですね。最近は、外国人旅行者数の増加が話題になっていますが、彼らがあまり訪れない地方にもまだまだ面白い所がたくさんあります。たとえば、江戸から明治期に北前船の寄港地として栄えた富山市岩瀬地区は、風情ある町並みを修景し、観光スポットとして、にぎわいを取り戻しています。これは「満寿泉」で有名な桝田酒造の五代目当主の力によるところが大きいようです。いい意味のパトロンですね。郷土愛あふれるパトロン。こうした地域振興の動きを加速させるには、たとえば地元の歴史を小・中学校のうちに教えて、「生まれ育った町や村が好きでたまらない」「故郷をみんなに知ってほしい」という郷土愛を育んでいくことが何よりも大切です。そういった取り組みが、地域振興の核となる人材や、そのような人材を周りで支えていく人材を育成し、ひいては観光のグローバル化へとつながるのだと思います。

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