「特別永住制度」は見直すべき時期に来ている 法改正による「新たな付与」は必要なのか

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しかし1952年4月以降に生まれた彼らの子どもたちが日本に在留するためには、出生後30日以内に在留申請しなくてはならず、在留期間は3年のため更新をし続ける必要があった。

そこで1965年の日韓地位協定により、韓国籍を保有する平和条約国籍離脱者及び協定発効5年までに日本で生まれた直系卑属に一般永住権とは別の永住権が与えられた。また協定発効5年以降に日本で生まれた子どもも、出生後60日以内に申請することにより永住権を得ることになったのだ(協定永住)。

だが協定永住が認められたのは韓国国籍保有者にのみで、北朝鮮籍保有者には認められなかった。また協定発効後5年以降に生まれた平和条約国籍離脱者の孫以降の直系卑属には認められないという問題もあった。そこで1982年から5年間に申請されたものに限り、無条件で永住が許可されることになる(特例永住)。

そして1991年、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」が作られ、これらが統一されて「特別永住制度」が創設された。特別永住者は出身国を問わず、また平和条約国籍離脱者の直系卑属ならば生まれた時期を問わず得ることができるようになったのだ。

特別永住者と一般永住者の差は?

では特別永住者は、一般永住者とどのような違いがあるのだろうか。

在留資格と再入国可能期間とみなし期間の年数、再入国時の上陸拒否の可否と強制退去の要件、上陸審査における個人識別情報の提供義務の有無、在留カードなどの身分証明書の常時携帯義務の有無などで両者は異なる。

たとえば特別永住者は、一般永住者の永住許可要件である「素行善良」、「独立生計」は不要とされる。強制退去となる犯罪も、内乱罪や外患誘致罪など国益を著しく棄損する行為に限定され、無期または7年超の懲役・禁固を受けた場合も強制退去となりうるのが日本の重大な利益を害する場合に限られる。

だが、平和条約国籍離脱者又はその子孫に相当する地位にあったにもかかわらず、諸般の事情で特別永住権を取得できなかった事例が存在する。たとえば入管特例法の施行前に日本から朝鮮半島に渡航し、東西冷戦の影響で政治犯として拘束され、再入国期間を徒過したケースだ。冒頭にも記したように現在では二十数名の該当者がおり、「平和条約国籍離脱者」に該当しないため、特別永住権を付与されていない。

彼らに特別永住を認めるかどうかについて、これまでも国会で取り上げられたことがある。民主党(現・民進党)政権下の2011年6月12日の衆院予算委員会で、滝実法務大臣は「韓国におけるいわば留学生が政治的な問題として日本に帰ってこられなくなった、したがって当然再入国期限を過ぎているわけだから、こうした人たちについてはもとのような特別永住者として扱うわけにはいかない、これはもう原則だ」と否定した。

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