東洋大学

グローバルに活躍できる人財を育成するには 東洋大学

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東洋大学 学長
竹村牧男
東京大学文学部印度哲学・印度文学科卒業。文化庁専門職員、三重大学助教授、筑波大学教授を経て2002年から東洋大学教授、2009年より現職。専門は仏教学、宗教哲学

竹村 そのようなグローバル人財を育成するためには、学生を海外に送り出すだけでなく、海外協定校を増やすなどして多くの留学生を日本に招き、日本人学生と多く触れ合う環境を作ることも必要です。そのためにも、中国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、カンボジアなどの国々でリクルート活動を行い、奨学金を支給して留学生を招きます。また、外国籍の教員を語学教育のみならず、専門教育でも増やしていきます。これにより、本学のキャンパスをダイバーシティに富んだ、日常的に異文化に触れられる場にしたいと考えています。さらに、文学部には異文化および自国の文化を深く理解し、自分の考えを多言語で発信することができるコミュニケーション力の育成を目指す国際文化コミュニケーション学科を新設。また、従来から国際地域学部にあった国際観光学科を国際観光学部として発展的に改組し、観光産業と観光政策を担う人財育成も行っていきます。

志賀 おっしゃるとおり、日本文化と異文化を学んだうえで、しっかりとした自分の考えを持つことが大切ですね。それがないと、単に欧米化が進むだけで、日本の長所も失われてしまいます。日本企業の土台には、人づくり、モノづくり、おもてなしといった独自の強みがあります。自分の守備範囲をはっきりさせたい外国人に対して、境界部分や縁の下の力持ち的な仕事をする日本人が組織を支えていることも忘れてはなりません。IoT(あらゆるモノがインターネットでつながること)、ビッグデータ、AI(人工知能)を駆使する第四次産業革命の時代を迎え、膨大なソーシャルデータのような物量重視の多国籍企業に対し、日本企業は、日本の得意とするきめ細やかさを活かす道を探ることも大切でしょう。

竹村 ICT(情報通信技術)関連では、2017年4月に赤羽台キャンパス(東京都北区)を開設し、情報連携学部を新設します。学部長には、IoTに先駆けてユビキタス(いつでも、どこでも)の概念を提唱した東京大学の坂村健教授を迎えます。コンピュータ・サイエンス教育を基盤として、プログラミング力をもとに多様な人々やシステムを「連携」させて、素早くアイディアを形にできる人財を養成します。

志賀 人の仕事がAIに奪われる危惧は、現実になりつつあります。学生の皆さんにはロボットが替われない能力を身につけてほしい。そのためには偏差値など従来の尺度で大学を選択するのではなく、将来何がやりたいのかという軸で選択し専門性を磨くか、もしくはどんな仕事にも対応できる高い教養を学ぶことで、卒業時には「これができる」というものを身につけてほしいと思います。

竹村 本学創立者の井上円了は、実学志向が強かった明治時代に、哲学をベースに、深く物事の本質を考えられる人財育成を掲げました。専門性も重要ですが、自分の頭で考えて判断し行動できる「独立自活」、学力と人間力の両方を備えた「知徳兼全」という建学の精神に沿った、常識や先入観を超えて課題を乗り越えて進むことができる人財を育てたいと思います。

志賀 そうですね、これからの時代は自分の頭で考えて主体的に行動する人財が求められています。そのような人財は大学名などの肩書きでは測れないため、大学名と本人の意欲だけで選考し、会社のメンバーシップを付与する日本の現行の新卒一括採用は見直すべきだと思います。産業革新機構は2024年までの時限立法による設立ということもあり、メンバーシップ型ではなく、プロフェッショナル型の雇用形態で、各人が自己の価値を高めて勝負する環境になっています。これが本来の企業のあり方でしょう。

竹村 同感です。井上円了は、哲学には知識と考察を通じて真理を解明する「向上門(こうじょうもん)」と、学んだことを駆使して人々に利する「向下門(こうげもん)」の双方が必須で、しかも「向上するは向下せんためなり」という言葉を残しています。つまり、他者のために自己を磨く。究極的には、そのことが一人一人の価値を高めることになるはずだと考えています。そのためにも本学では、東洋大学「Beyond2020」というビジョンを掲げ、大学改革を推進していく予定です。

志賀 今後、企業の戦略は、企業の活動そのものが社会のためになるものでなければならないと思っています。学生が社会人となり、グローバルな環境で修羅場をくぐっていくための強さの源泉は、ナレッジとスキル、そして精神と魂と心を磨いて得られるコンピテンシーだと考えます。グローバル人財育成や、自己の価値を高める取り組みを推進している東洋大学の学びに期待しています。