痴漢常習犯は医療で治るのか、治らないのか

1人の更生に1000万円以上費やされるが・・・

リスク査定と診断の段階で必要とされれば薬物療法を行う(写真:gopixa / PIXTA)
過去5年の、痴漢事犯での検挙者数を見ると、年間3700~4300人の間で推移している。これは、氷山の一角でしかなく、ひとりの痴漢が複数の女性に加害しているケースが多いこと、被害を訴え出ない女性が多いことを考えると、実際の被害の数は万単位になることは明らかだ。
2020年東京オリンピックに向けて「クールジャパン」「お・も・て・な・し」を打ち出しているにもかかわらず、誰もが日常的に利用する交通機関で女性の身の安全すら守られていないというありさま。性犯罪件数を1件でも減らすため、ひいては安全な社会を実現するための有効手段として「痴漢加害者再犯防止プログラム」に注目したい。

 

9月某日、精神保健福祉士で社会福祉士の斉藤章佳氏は、東京地裁で行われたある裁判に証人として出廷していた。

被告は、50代の元会社員男性。罪状は迷惑防止条例違反、痴漢行為によって起訴された。過去にも痴漢行為が複数回、発覚していたが、示談成立か、罰金刑で不起訴に終わっていた。家族や会社に知られ、職を失い、示談金や罰金で経済的ダメージを受けたにもかかわらず被告の悪質な行為は止まらず、ついに起訴された。

被告は「よき夫」で「よき父」

被告は、いたってフツウの男性。仕事ができる会社員であり、家庭では家事も積極的に分担する“よき夫”であり、休日は家族サービスにいそしむ“よき父”だった。しかし家族や同僚の知らないところで、犯行を繰り返していた。

公判で、被告は口を開くたびに反省の言葉を繰り出した。「女性が喜んでいると思っていたが、それはまったくの間違いだった」「嫌がる女性に自分はひどいことをした」「被害女性に申し訳ない」。

加害者臨床の専門家である斉藤氏が弁護側の証人として出廷したのは、被告が再犯防止に意欲的であることや、彼の治療可能性について証言するためである。弁護士が被告の勾留中に斉藤氏の所属する東京・榎本クリニックに相談し、本人の意向を確認したうえで刑事手続きの段階から治療的介入を始める「司法サポートプログラム」を開始した。

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