社会的課題にイノベーティブに取り組み、市場を創出してほしい

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CSRに対する企業の関心が高まっている。活動が定着する一方で、さらにその本質が問われるように。特にグローバルな潮流は無視できない。こうした中、企業はCSRにどのように取り組むべきなのか。企業システム論、「企業と社会」論などが専門で、企業と社会フォーラム(JFBS)会長も務める、早稲田大学商学学術院商学部の谷本寛治教授に聞いた。
早稲田大学 商学学術院 商学部 教授
谷本 寛治
1979年大阪市立大学商学部卒業、84年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。和歌山大学経済学部教授などを経て、97年一橋大学商学部教授、2000年同大大学院商学研究科教授に就任。05年特定非営利活動法人ソーシャル・イノベーション・ジャパン代表理事、09年 社会・経済システム学会会長、10年と14年にFreie Universität Berlin 客員教授、11年から企業と社会フォーラム(JFBS)会長を歴任し、12年から現職。16年National Taipei University 客員教授を務める

CSRとは企業のマネジメントそのもの

―CSRに関する企業の関心が高まり、多くの企業がさまざまな取り組みを行っているようです。

谷本 この10年から15年ほどの間に、CSRという言葉がかなり普及しました。また、CSRの部署や担当役員を置くところも多く、制度的な対応はかなり進んでいます。CSR報告書を作成している企業も1000社を超えるようになりました。

10年余り前には、私も「CSRで何をすればいいのか」といった相談を受けることも少なくありませんでした。企業や業界による理解度の差も大きかったと感じています。CSRを、不祥事や法令違反の防止のためと狭義にとらえる人もいました。

企業が「何をすべきか」という点については、さまざまなガイドラインも出てきています。国連が提唱する「グローバル・コンパクト(UNGC)」や組織の社会的責任の国際規格である「ISO26000」のほか、環境・社会の個別課題についてさまざまな基準やルールが存在します。開示についても、「GRIサステナビリティ・レポーティング・ガイドライン」などがあります。

やるべきメニューは明確に出ており、これらに基づくことが、グローバルなコンセンサスになりつつあります。ガイドラインをチェックボックスのようにして埋めればいいという意味ではなく、経営のあり方を見直す機会にしてほしいと思います。

―「CSR=社会貢献」と考える企業もあるようですが、改めてCSRの本質とは何なのでしょうか。

谷本 確かに、寄付などのフィランソロピー活動(社会貢献活動)はCSRの要素の一つですが、それだけではありません。

CSRとは、企業が市場社会において、どのように責任ある経営を行い、信頼・競争力を高めるかということにほかなりません。CSRは企業の経営そのものと言えます。

たとえば、製品やブランドがいくら高い評価を得ていても、それを製造している国の工場で奴隷労働などの人権問題が生じていれば批判を受けることになります。欧州では最近、大手企業に非財務情報の開示が義務付けられました。日本企業でも対応が求められます。ただし「ルールだから」、「他社がやっているから」といった姿勢や報告書の形式や開示項目にばかり目を向けたりということでは、市場からの信頼獲得という本質を見失うことになりかねません。

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