レノボがグローバルブランドになれる理由 ポストPC時代をリードする成長戦略とは

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Think にIdeaを足す、絶妙のブランド戦略

IBMのPC部門を買収したものの、世界的にはまったく無名であり、むしろ中国企業につきまとうネガティブイメージから出発したレノボブランドのグローバル化は大難題でした。短期間でブランドの認知と価値を高めるために彼らが採用した戦略は、「ThinkPad製品にかぶせる企業ブランドをIBMからLenovoに徐々に移行しながら、Thinkのブランド力を利用してLenovoの信頼度を向上させる。Lenovoブランドに力を蓄えた後、その傘下に新たな商品ブランドを立ち上げていく」というものです。

ビジネスユースに強いThinkPadやThinkCentreなどの「Think」ブランドに次ぐ2本目の柱として、2008年にパーソナル市場向けの新ブランド「Idea」を冠したノートブックPC「IdeaPad」が発売されました。これは、より広い市場セグメントをカバーするための事業/マーケティング戦略であると同時に、Think一本に頼らず複数のサブブランドでLenovo企業ブランドを支える「ブランド・アーキテクチャー戦略」でもあります。

 現在、「Idea」はPCだけでなくタブレットやスマートフォンの商品ブランドとして使われています。今人気を集めている、ディスプレー部が360度回転してタブレットに変身するウルトラブック「IdeaPad Yoga 13」がその好例です。

さらに2011年春からグローバルにレノボのイメージ向上を図るブランド・コミュニケーションを開始しました。「Lenovo for those who do」のスローガンの下、テレビCFやインターネット広告を展開してブランドの価値とパーソナリティの伝達を図っています。

以上、2003年以降、10年足らずの間のレノボの事業とブランドのグローバル化の流れを駆け足で紹介しました。楊元慶会長の先見性あるリーダーシップとスピード感あふれる実行力が、レノボをこの先どこへ導くのか、これからも注目したいと思います。 

岡崎 茂生 フロンテッジ ソリューション本部副本部長

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おかざき しげお / Shigeo Okazaki

1981年東京大学教育学部卒業、1989年ピッツバーグ大学経営大学院MBA。1982年電通入社、2006年より北京駐在。北京電通 ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、現職。30年におよぶ広告・マーケティング領域での経験をベースに、中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行なう。アジア各国およびアメリカの大学/大学院でのブランド講座・公開セミナー、フォーラムでのスピーチ、雑誌連載など多数。チュラロンコン大学商学部マーケティング学科客員准教授、南京大学ジャーナリズム&コミュニケーション学院客員教授、湖南大学ジャーナリズム・コミュニケーション&映像芸術学院客員教授。

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