三菱自動車「eKワゴン」の内なる敵 日産との共同開発、新型軽自動車を投入

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ブランド力は再び低下、競合は強敵ぞろい

このタイミングで投入した新型軽「eK」シリーズは、低迷する三菱自の国内販売を上向かせる起爆剤として、販売店側の期待は高い。ただ、過去のリコール隠しを想起させかねない出来事を受け、ブランド力は再び低下。「今後1年や2年でブランド力を取り戻すことは容易ではない」と服部利彦・国内営業統括部門長も認める中で、そもそもダイハツ「ムーヴ」やスズキ「ワゴンR」、ホンダ「N ONE」という強力なライバル車に挑む上、ほぼ同じ新車を売る日産とも競り合わなければならない。

さらに、三菱自の商品開発力は「独自性」が薄れてしまう側面もある。益子修社長は6日の発表会で、水島で生産してきた自社の軽自動車「トッポ」と「 i (アイ)」の生産打ち切りを決めたことを明らかにした。「今後の開発や生産面においても日産とやっていくことになる」(益子社長)。

1961年に発売した「三菱360」から三菱自の軽自動車の歴史は始まった。それから50年あまり、三菱自がすべてを自前で開発する軽自動車は姿を消すことになった。日産の技術を採り入れられる面はあるが、逆に日産へは「虎の子」の軽自動車技術を供与することにもなっている。

結局のところ、三菱自は国内で自力で勝ち残るのは難しいと判断し、割り切った戦略に出ているという見方もできる。いずれにせよ3代目「eKワゴン」は、“内なる敵”を抱えながらの船出となる。

(撮影:大澤 誠)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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