
【オープニングトーク】
いちばん嫌なのは、知ったかぶり
サヘル・ローズ氏
(聞き手:東洋経済オンライン山田俊浩編集長)
「メディアの使命は、今世界で何が起きているのかをきちんと伝えることではないでしょうか」。ニュースサイトのチェックを毎晩の日課としている女優のサヘル・ローズ氏が語る。中東では日本などの先進国と比べ情報が制限される場合が多く、「たとえば難民問題についても、メディアがあるからこそ、私たちは当事者の思いに触れることができる」と指摘。知ることで、次の行動につながることもあるだろう。「だからこそ、さまざまな角度から取材対象に迫り、報道してほしい。メディアには世界に発信する力があり、世界の多くの人たちをつなげる力を持っている」と、メディアの重要性をあらためて強調した。一方、日本では海外問題など世界の重要なニュースへの関心が低下している現状について、「メディアが導線を引くことで読者に”気づき”を与え、関心を高めていくことが大切だ」と語った。
【トレンドセッションI】
マスメディアからマイメディアへ
グローバルでのメディア業界変革事例
セールスフォース・インダストリー本部
通信メディア業界担当ディレクター
石井 敏雄氏
セールスフォース・ドットコムの石井敏雄氏はメディア業界を変革するトレンドについて解説した。注目すべきは「デジタルディスラプション(破壊を伴う創造)が進展し、ネットワークにつながったコンテンツ配信が主流となる中で、新規参入者が登場。それらはデジタルコンテンツの流通で2017年度までに収益を倍増させる見込み」と指摘。とりわけ米国内では過去5年で新聞社の広告収入が半減する一方、新規参入者は個人の嗜好に合わせ、コンテンツ配信し、「パーソナライズされた顧客体験」へ大きくシフトしていると強調した。
そこで注目されているのが「マイメディア」であり、「お客様とのエンゲージメントを強化」することが重要だと石井氏は語る。いわば、「個人の嗜好を理解したうえで、お客様との接点を重視し、関心の高いコンテンツをタイミング良く提供すること」だと説いた。
【特別講演・インタビュー】
『Yahoo! JAPAN』のメディア事業戦略
グループ長 上級執行役員
宮澤 弦氏
ヤフーの宮澤弦氏は、「15年5月、スマートフォン版をリニューアルし、タイムライン化した。目的はいかにアプリユーザーを増やすかだったが、スマホシフトは大幅に進行した」と語った。ヤフーは創業20周年。ヤフーのメディア事業のビジョンは「ユーザーの行動につながるメディア」になることだ。魅力的なユーザー体験を提供し「消費から次の行動へ」移すためにYahoo!JAPANアプリ、オリジナルコンテンツを強化し、つながりあるプラットフォームを構築。ネットで完結する世界への起点となる取り組みを拡大するという。
『Yahoo! ニュース』の取り組み
メディアカンパニー長 執行役員
片岡 裕氏
また、『ヤフーニュース』の具体的な取り組みについて、ヤフーの片岡裕氏は「現在、月間150億PVを達成。PCとスマホの比率は35対65へ変化した」と紹介。さらにスマホが増加したことで「ユーザーが求めるコンテンツと消費行動が変化する」と指摘。起点力を高めるためにもビッグデータの活用が必要だと語った。
【トレンドセッションII】
「分散型元年」における、真に注目するべき指標とは
媒体のファンはどこに価値を感じているのか?
メディア・ソリューション部リーダー
藤澤 裕人氏
ログリーは「コンテンツレコメンデーション」と「アドネットワーク」を柱に06年に創業。以来、一貫してメディア向けのソリューションを行ってきた。ログリーの藤澤裕人氏は「SNS、キュレーションからの流入でPVはアップしているが、一見さんの比率が高まる一方で、ターゲットユーザーが低下している」と指摘。ターゲットユーザーとは「ロイヤルユーザー」であり、彼ら彼女たちをより注視することがメディアのマネタイズにおいては重要だと説く。「広告主はPVばかりを求めているわけではない。重視しているのは、プレミアムなオーディエンスだ」という。
そこで、プレミアムなオーディエンス、ロイヤルユーザーを増やしていくための分析手法を披露。事例を紹介しながらファンを定着させていく取り組みの重要性を強調した。
【トレンドセッションIII】
コンテンツメディアによる新しいエコシステムの構築
代表取締役社長
菅原 聡氏
日本ビジネスプレス社長の菅原聡氏は「マネタイズとコンテンツ・広告の流通は表裏の関係にあり、媒体社はコンテンツや広告を直接ユーザーに届けるモデルをもっと強化すべきだ」と指摘する。また、ユーザーデータこそが資産で「ユーザビリティを下げずに、素通りさせているユーザーをどう捕まえるかが大きな課題」であり、「ユーザーデータを献上する側になるのか、マネタイズする側になるのか?」と続けた。
具体的にはコンテンツメディア同士が連携し、共有型のプラットフォームでこれらの課題を解決することで、コンテンツに再投資が可能なレベルでのマネタイズを実現したいと考えており、「当社のメディアサイト構築支援インフラの上に、収益化のためのエコシステムを実現するプラットフォームを実装中なので、ぜひご参加を」と、会場のメディア関係者に呼びかけた。
【メディア討論】
激動するニュースサイトの未来
挑戦と変革
デジタル本部長
山盛 英司氏
メディア局編集部長
原田 康久氏
朝日新聞社の山盛英司氏は『朝日新聞デジタル』ほか、『ハフィントンポスト』『ウィズニュース』など多媒体を展開するデジタル戦略を紹介。一過性の話題に終わるのではなく、息が長く読まれる記事があることを示し、これからは課題となっている事象にフォーカスして具体的なアクションにつながるような「解決模索型報道を目指し、紙面とデジタルとの連携に注力する」と語った。『YOMIURI ONLINE』を展開している読売新聞社の原田康久氏は、強力なコミュニティに育っているコンテンツ『大手小町』にふれ、中でも、女性向けのネット版井戸端会議ともいえる『発言小町』は男性のユーザーも増えていると紹介した。朝日は高校野球、読売は箱根駅伝など、多くのキラーコンテンツを有しており、ともに「これまで新聞社が築いてきた歴史的な資産をデジタルに結び付けていく」と強調。
一方、読売新聞の原田氏は「新聞の究極の目的は社会貢献であり、ジャーナリズムを細らせないようにすることが使命」だとし、「ジャーナリズムこそ民主主義を守る最大のシステムであることを忘れてはならない」と締めくくった。