そうした情勢下、いち早く、女性活躍、そしてダイバーシティ推進に取り組んできたのが東芝だ。東芝がダイバーシティ推進に取り組み始めたのは2004年。女性役職者の登用、女性が働きやすい職場づくりなどの施策を推し進めてきた東芝の取り組みとは一体どのようなものなのか。今回、現場の第一線で働く女性役職者に東芝の社風、職場の働きやすさ、キャリアプランなどについて語ってもらった。ダイバーシティ推進の責任者である牛尾文昭東芝専務へのインタビューと合わせてご紹介する。

技術力と実行力
真面目で誠実な社員
――本日は女性役職者の方々にお集まりいただきました。皆さんから見て、東芝とはどのような会社だと思われますか。
中山 私は入社してまだ1年も経っていませんが、これまで外側から見てきて、誠実で真面目な会社だという印象を持っています。入社して特に実感したのは、技術力にかける皆さんの思いです。新しいものや世の中の役に立つものをつくり出したいという思いが強い。また、動き出したらやり抜くという実行力も特徴的だと思っています。
瀧川 オープンで自由闊達な雰囲気を感じます。男女、年齢問わず、建設的な意見はつねに聞く姿勢を持っています。また、真面目な方が多く、がんばる人には支援を惜しまない会社だと思います。
森田 どの部門でも誠実な方が多いですね。私は研究所で技術者として20年以上過ごしてきましたが、技術者には各分野の専門家であるというプライドもあり、真面目な方が多いと思います。
――女性の働きやすさという視点から、職場環境、業務についてはいかがですか。
システム技術ラボラトリー
研究主幹
森田千絵
1991年東芝入社。一貫して機械学習やデータ分析分野の研究開発に取り組み、現在は、ラボの企画リーダーほか、(一社)人工知能学会理事などを務める。
森田 女性の働きやすさという点では、実はこれまで意識したことはほとんどありません。女性だからといって特に困ることもなく、普通に仕事をしてきたと思います。
瀧川 私もそうですね。振り返っても、女性であることで差別を受けたという記憶はありません。上司や周りの心遣いもあったと思いますが、特に気にしたことはありません。
森田 あえて言えば、妊娠・出産のときに体力的にきつい仕事について、配慮していただいたくらい。私は今でも子どもの世話で、会社にいる時間がほかの人と比べて短いのですが、これにも理解、協力をいただいています。
中山 女性の働きやすさに関する制度は十分に整備されています。10年以上前から東芝はダイバーシティに取り組んでおり、外から見て非常に先進的だと感じていました。
充実したキャリア支援と
家族や職場などのサポート
――キャリアへの支援についてはいかがですか。
営業企画部
市場調査グループ
グループ長
瀧川明美
1994 年東芝入社。半導体事業、マーケティング分野を中心に歩み、市場調査、新規事業立案に携わる。 現在は半導体およびストレージ製品の世界市場調査などに従事している。
瀧川 キャリア年数や職種等に応じた研修制度は充実していると思います。入社3年目の女性従業員を対象としたキャリアデザイン研修などもありますし、ときには会社の研修所に泊まり込んで課題に取り組む研修もあります。研修は、いろいろな部署の方々と交流できることもあり楽しいですね。
森田 語学や技術の知識など個人で必要なものは自分で手を挙げると受けさせてくれます。必要なスキルを必要なときに身に付けることができます。
中山 その点は非常に充実していると思います。しっかり体系化されて、テーマに応じて細かく分かれており、著名な方々も外部講師として来てくれます。人材に対する投資に非常に熱心な会社だと思います。
森田 今は新卒でも文理問わず女性の割合が増えてきていますし、長期的な視点で、優秀な女性従業員にいかに活躍してもらうか、その結果として、責任ある立場でもどんどん活躍してもらおう、という会社の方針を肌で感じています。
瀧川 昔は結婚したら辞めるという人も多かったようですが、時代やニーズとともに徐々に働きやすい環境に変わってきました。
――仕事と家庭は両立できていますか。
森田 私は普段、17時には退社するのですが、どうしても遅くなるときは実家に頼んで子どもの面倒を見てもらったり、都合がつけば夫に見てもらったりするようにしています。あと、子どもが体調を崩したときなどは急なスケジュール調整が必要なときもありますが、これも家族や職場の協力を受けていてありがたいです。
瀧川 子どもが小さいときは大変でした。たとえば子どもの急な発熱時などは早く帰宅させてもらったりと職場がサポートしてくれる体制でしたね。保育園が夜8時まで預かってもらえたのは恵まれていたと思います。
森田 私は出産で休んでいる間に上長が異動してしまったのですが、その間もメールで連絡を受けて挨拶などのやりとりはできていたので、職場に復帰したあとも特に支障はありませんでした。
中山 周りを見ていると、女性役職者の方は、自然体の方が多いですね。「私、がんばっています」的な人はあまり見かけません。周りも自然にサポートしたり、受け入れたりしている印象です。
森田 男性の育児へのかかわりという面もあると思います。周囲には子どもの送り迎えなどをやっている男性もいますし、父親として主体的に育児を担う人も増えていると感じています。
働きやすさと
働き甲斐を考える
――これからのキャリアについてはどのように考えていますか。
人事企画担当
参事
中山尚美
コンサルティング会社数社を経て、2015年12月東芝入社。現在は役員人事、サクセッションプラン、経営幹部人材育成等を担当する。
中山 私は人事の仕事が一生の仕事だと考えています。東芝にはもっと可能性があると思っていて、今やりたいことは東芝の可能性をさらに開花させていくことに人事面から貢献することです。その意味で、今担当している経営幹部人材育成もとても重要な仕事だと思っています。
瀧川 これまで上司の方や周りの方の期待に応えられるようにコツコツと仕事をしてきた結果が、今につながっていると思います。これからも同様に自分の強みを生かしつつ、市場調査グループ「ここにあり」とオピニオンリーダー的部隊になれるように貢献していきたいと思っています。
森田 研究開発の仕事そのものについてだけでなく、周りの方々が力を発揮できるようなチームづくりに貢献していきたいと思っています。振り返ってみれば、私も子どもが生まれて時間的制約が大きくなったことは大きな転機だったのですが、周りの人たちのおかげで、ここまできました。もし同じようなことで悩んでいる後輩がいたら、1人で苦しまないでほしい、周りがサポートするからとにかくやってみてと伝えたいですね。
――東芝は今「新生東芝」を掲げています。ご自身がどのような役割を果たすべきだと思っていますか。
中山 「新生東芝」は、東芝本来の可能性を実現するものでありたいですね。「東芝に入れば成長できる」「東芝に入ればリーダーシップが磨かれる」そして「東芝とつながることで自分の人生が物心両面ともに豊かになる」というような会社であってほしい。そのために私のやるべきことは、役員や経営幹部の方に存分に活躍していただくことを人事面からサポートすることだと思っています。
瀧川 私は市場調査で事業をサポートしていく立場にありますが、会社の意思決定を支えるための判断材料をどのように価値あるものにしていくべきか。市場変化が激しい中、 鮮度、確度の高い情報提供に加え分析力という付加価値で「新生東芝」の成長に向けた一翼を担いたいと思います。そのためには部下のモチベーションを引き上げることも重要ですね。部下に気持ちよく仕事をしてもらえるように、皆の意見を聞きながら進め、さらにチーム力を高めることを心掛けています。
森田 東芝の技術者たちは優秀な技術を持っているので、チームによる相乗効果がもっと発揮できると思っています。私は部門長のすぐ下の立場にいますから、ときには部門長の代わりに、上長の意向をさりげなく部下に伝えることもあります。コミュニケーションの潤滑油という意味では、女性であるという利点はあると思います。
瀧川 本質的に何が大事なのかを見極め、人と人をつなげたり、物事をうまく調整したりすることは、男性よりもしやすいかもしれないですね。
――東芝に関心のある方、東芝で働きたいと考えている方へのメッセージはありますか。
中山 東芝は、何が大切かを自分の頭で深く考え、即行動することを求めている会社だと思います。何か目標や想いを持って仕事に取り組める方にとって、価値のあるすごくすばらしい場だと思っています。
瀧川 私は仕事を通じて知的好奇心や知的欲求を満たすことで自分の人生を豊かにし、また、家族をはじめ周囲に刺激を与えられるような人を目指しています。東芝には女性が活躍しやすい場をはじめ、多様性を持った人材に応えられる環境があると思っています。チャレンジしたいことがある方と、「新生東芝」でご一緒できることを楽しみにしています。
森田 私自身、いろいろな部署のいろいろな人と接することで刺激を受けてここまできました。その意味で、自分が成長できる場がここにはあります。東芝をさらに夢のある会社にするために、皆さんと一緒に新しい風をつくっていけたらいいと思っています。

瀧川さんの話を聞いた入社3年目の女性たちからは、活発な質問が返ってきた。「モチベーションの根源とは何か」「転職を考えたことはないのか」「結婚・出産はどのタイミングが適切か」「東芝を好きな理由はどこか」「20代、30代にしておくべきこととは何か」など。若手の女性社員たちも、いろいろなことに悩んでいる。東芝では、そうした点を考慮し、少しでも女性社員たちの不安を取り除くべく、さまざまな制度や研修が用意されている。先輩からのアドバイスは、きっと後輩たちの良い道しるべとなるに違いない。

――女性活躍をはじめとしたダイバーシティ推進の、現在の状況を教えてください。
牛尾 「性別、国籍、年齢、障がいの有無によって働きやすさに差があってはいけない」という考えのもとで、ダイバーシティを推進してきました。2004年10月にダイバーシティ推進の専門部署「きらめきライフ&キャリア推進室」を立ち上げて以来、仕事と育児・家事などの家庭との両立、女性従業員がいきいきと働き、能力を発揮できる職場環境づくりなどの支援制度の整備に取り組んできました。この間、満3歳までの育児休職制度や小学校修了までの短時間勤務制度の導入、さらには女性従業員向けのキャリア研修、社内保育所の設置、介護支援の拡充などを実現しています。
――非常に早い段階からダイバーシティ推進に取り組まれていますが、その理由は何でしょうか。
牛尾文昭
牛尾 一つは事業環境の変化です。グローバル化の進展の中で成長を実現し、企業価値を高めていくには、多様な人材の積極的な活用・育成こそがイノベーションを生み出す源泉となります。もう一つは人材の確保です。これから生産年齢人口が減少していく中で、性別、国籍、障がいの有無に関係なく人材を活用しなければ、将来、人材確保に支障をきたす可能性があります。さらに言えば、2015年の会計処理問題に端を発し、誠実な経営の実現に向けてさまざまな施策を実施していますが、風通しの良い企業風土を醸成するうえでも、多様性は不可欠であると考えます。
数値目標を設定したことで、
取り組みが加速した
――ダイバーシティ推進の成果は出ていますか。
牛尾 たとえば、女性役職者比率について言えば、2004年に0.8%(45人)だったものが、2016年には4.3%(324人※)になるなど確実に成果が出てきていると言えます。これからは経営幹部についてもさらなる登用を進める方針です。また、日本勤務の外国籍従業員についても、この10年で約400人増えています。これらの施策に伴って、会社の雰囲気も変わりつつあると感じています。
※正規従業員ベース
――2020年度末に女性役職者比率7.0%を目標に掲げています。
牛尾 数値目標を設定したのは、女性活躍推進の取り組みをさらに加速させたいからです。数値目標を設定することで取り組みが加速すると思いますし、今後も目標達成に向けて数々の施策を展開していきたいと思っています。
――7.0%の達成に向けて、どのような施策が必要だとお考えでしょうか。
牛尾 若手女性従業員のキャリア支援として、入社3年目の女性従業員を対象とした「キャリアデザイン研修」や「育児後復帰支援セミナー」を開催しています。さらに職場での意識啓発のために、上司・配偶者向けの「育児後復帰支援セミナー」も同時に行っています。2014年度からは女性のロールモデルを勉強してもらうために、異業種の女性交流研修を積極的に行うようになりました。また、女性役職者候補者層向けの研修の充実や、女性のキャリア採用の積極化も行っています。
土光敏夫の指摘は今も生きている
未来のための核づくりが必要
――「新生東芝」を進めていくために、どのような取り組みを行っていますか。
牛尾 現在、さまざまな仕掛けを行っているところです。初めての試みとして、経営幹部向けに「360度サーベイ」を実施し、自らのリーダーシップの資質を多面的・客観的に気づいてもらうことに取り組んでいます。今後はそれを課長クラスにまで広げていきたい。組織というものは、何もやらないと前には進めません。いろいろなことを試してこそ、問題点も浮き彫りになります。
今から40年以上前のことですが、当時の土光社長が「決めたことが実行されない体質が、当社の病根である」と指摘しています。それは今でも十分に通じると考えています。一方で土光は「誰かが核になってやればついてくる。2~3カ所に核ができれば、ぱっと変わる」とも指摘しています。その核づくりをわれわれが担うことができればと思っています。
会社は自己実現の場
――読者に向けてメッセージをお願いします。
牛尾 将来的には、「女性」という括りがなくなってほしい。性別を意識すること自体、まだダイバーシティが推進できていない証左でもあります。
私は「会社は自己実現の場」だと考えています。自分が「真のプロフェッショナル」になれるよう、会社という場を使ってもっと自分を磨いてほしいと思います。