世界が求める新しいグローバルリーダーを輩出
東京大学
気づき、変化し、成長する。学生の可能性を広げる場
グローカルな視点で社会や経済システムの動態を理解し、本質的な問題や可能性を発見できる人材の育成を目的とする東京大学ソーシャルICTグローバル・クリエイティブリーダー育成プログラム(GCL)。木戸肩吾さんがGCLを選んだ理由は、分野の垣根を越えた協働により俯瞰的な視野を得たいと考えたからだ。「私の研究テーマは物理情報システムの安全性。GCLでは異分野の学生や先生と交流できるので、自分の研究をより客観的かつ相対的に見ることができます。ですから、たとえば応用分野として想定される自動運転が社会の中で機能していくためにどのような課題を克服する必要があるのか、さまざまな領域への関心が広がる一方です」。
東日本大震災の経験から災害時における情報発信のあり方などを研究テーマとしている渋谷遊野さんも、プログラム内容にモチベーションを刺激されているようだ。「GCLでは多彩なワークショップ形態の講義や第一線で活躍されている実務家の方々の講演など学びの場そのものがほかとはかなり違います。プレゼンの機会が充実していることも魅力の一つですね」。
木戸さんも、年2回開催されているプレゼンコンペに触れた。「最初は伝えたいことがまったく届かずに、本当にボロボロな内容でした。それがプレゼンの訓練を受け、インターンシップで企業と共同研究を行うことで専門外の人に自分の研究テーマや技術的な内容を伝えるにはどうすればいいか自分の中で大きく意識が変化しました。2回目には想像以上に成功しました」。
渋谷さんが印象に残っているのは、インターンシップで訪れた米国での経験だ。「同年代の学生が起業した、災害時の情報提供の仕組みを構築するスタートアップ企業にも訪問し、起業という選択肢があるのかと気づかされました」と語る渋谷さんは続ける。「民間の立場から災害対策に貢献することや、米国で出会った彼らのように自分で起業するという方法もあると思い始めています。いろいろな可能性があるのだと実感できるようになりました」。GCLは在学中の起業も積極的に支援しており、学びの先にある可能性も広がっている。木戸さんも「研究対象が応用まで及ぶようになったことで、幅広い領域でチャレンジができる起業の面白さに関心が出てきました」と語ってくれた。
《東京海上日動火災保険 経営企画部 次長 牧野司 氏》
東京農工大学
多彩な価値観と接し幅広い視野を獲得する
研究室のローテーションや社会との接点を多く設けることで、実践的なイノベーター人材の育成を目指す、グリーン・クリーン食料生産を支える実践科学リーディング大学院。
機械システム工学を専攻し、においセンサーの研究を行う木田仁さんは「ワークショップではさまざまな専門領域や海外の方とグループになって一つのテーマについて議論します。また、横断的な学びのプログラムによって、これまで接する機会の少なかった多様な考え方に触れることができ、コミュニケーションの取り方、自分自身のモノの見方や行動も大きく変化しました」と語る。きっと、リーディング大学院での学びを通して俯瞰的な視野と多角的に物事をとらえるクセが身についたのではないだろうか。
一方、「修士課程在籍時の就職活動中に企業が求めているのはグローバル人材だと思い知らされました」と語るのは高分子材料を研究する久保田有紀さん。「言葉の問題だけではなく、幅広い視野を持って課題解決に取り組むことのできる能力がなければとても通用しないと気づかされたのです。そこでリーディング大学院へ進学し、学び続けることを決めたのです」。その判断は正しかったようだ。「ドイツでのグループワークでは、多彩なキャリアを持つメンバー一人ひとりの個性が発揮できるようにチームビルディングを行いながら、解決口を探していく議論の進め方に刺激を受けました。課題解決におけるコミュニケーションの重要性を強く実感したのです」。
木田さんが思い描く将来像は途上国の発展に貢献する姿。「現地の方々の本当のニーズ、さまざまな慣習や技術的な制約なども理解しながら、課題解決に貢献していきたい」と語る木田さんは、大手水処理メーカー水ingの内定を受けており「早く一人前として世界で活躍できる存在になりたいです」と続ける。 久保田さんはスリーエム ジャパンへの就職が決まり「世界に向けたさらなる技術発信・市場展開など、日本と世界をつなぐ役割を担いたいですね」とほほ笑む。
《水ing 総務・人事統括 人事部 採用・研修課 林義崇 氏》
「私どもが進む方向とリーディング大学院が育成しようとしている人物像には親和性があります。今後も、関係を深めていければ」と一歩先を見据えている。
《スリーエム ジャパン 人財開発部 部長 信田一栄 氏》
名古屋大学
グローバルが求める真のリテラシーを育むために
グローバルなものづくりビジネスを支え、社会の各分野でリーダーとして活躍する職業人としての博士号取得者養成を目指すPhDプロフェッショナル登龍門(以下、登龍門)。
「実社会に出る時、際立ったアドバンテージがほしいのです」と進学の理由を語るのは、統計学や人工知能などを駆使したマーケティングの可能性を研究テーマとする新美潤一郎さん。「博士号取得後の就職ですから、20代後半から社会人1年生としてスタートすることになります。そこでは一つの専門分野だけでは通用しないのではないか、という問題意識がありました。でも、登龍門なら専門性のみならず、海外研修や提携企業の強力なサポートに基づく産業界のエグゼクティブの方々との交流など、さまざまな経験を通じてこれからの時代に必要な知識と実践力、幅広い視野を養えると思ったのです」。来年4月からいよいよ博士後期課程3年になるが、これまでの間に自身の変化、成長を感じる局面が何度も訪れた。特に企業・官庁などで活躍する社会人メンターの支援を受けるプログラムは、「今まで自分の中になかった考え方が引き出され、新たなチャレンジのきっかけになりました」。
その社会人メンターの一人が、日本IBM研究開発大学連携の辻智部長だ。二人のやりとりの中で、米国IBMの研究開発現場が話題になり、「世界有数のラボを感じたい」という新美さんが登龍門推進室に相談。即座に推進室も反応し、電話で辻氏に集団での視察研修の可能性を打診した。「新美さん、そして推進室の熱い要望に応えなくては」と辻氏も奮闘。米国IBMの関係者などと調整し、米国ニューヨークでの研究所・事業所の視察を実現させた。新美さんは博士号を持つIBMの研究者たちに次々と会った。そこで知ったのは、博士たちが本来の専攻とはまったく異なる分野に対しても、臆せず果敢に取り組んでいるということ。博学多識でフロンティア精神にあふれる姿に触発された。
「博士という学位の本当のチカラを感じました。同時に、自分自身もそこに一歩でも近づけるようにさまざまな領域にチャレンジしなくてはという思いにも駆られました」と新美さん。辻氏も「博士の博は博識の博。そうした意味では登龍門のコンセプトや教育内容は間違いないと確信しています」と期待を寄せる。「世界のビジネスの現場で通用する、博士をどんどんと輩出してほしい」。
何よりも、発想力豊かな登龍門に対して全幅の信頼を寄せている。辻氏は続ける。「IBMにはgivebackの精神があります。企業を支える社員一人ひとりの今があるのは、教育機関での教えがあったから。与えていただいた恩を企業人としてお返しするという使命があるのです。特に日本の将来を背負って立つ、積極性、情熱、好奇心などにあふれた新美さんのような学生を応援しないわけにはいきません。とりわけ名古屋大学の登龍門は自由闊達という伝統的校風のもと、柔軟な着想を持った学生がのびのびと成長しています。名古屋大学をはじめ博士課程教育リーディングプログラムを採択されているすべての大学も、先例がない中で試行錯誤をしつつ、さまざまなチャレンジをされていると思いますが、くじけずに今の勢いで進んでいけば必ず成功すると信じています」。
博士課程教育リーディングプログラムの挑戦に、注目したい。