介護施設を「幼稚園」のようにしてはいけない 「わたしの家大学」のスゴい取り組み

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「さぁ、なんででしょう。一緒に創り上げる喜び、そしてお互いが支え合う喜びが、皆さんを動かすのでしょうか。人生の最後まで安心して暮らせる、そんな町づくりに貢献したい、というお気持ちもあると思います」

お話を聞きながら、ボクは、もうひとつ大きな理由があると思いました。ご近所にかわいがられる“律ちゃん“のお人柄、地元に恩返ししたいという純粋な気持が、ご近所のみなさんの心に響くのではないでしょうか。キラキラと目を輝かせてお話をされる谷口社長には、人を動かすパワーがあふれています。

町全体を大きな介護施設にする、という考え方

最後に夢をお聞きしました。「須山町全体が大きな介護施設というイメージで町づくりをしたいと思っています。『わたしの家大学』が勉強部屋、『おしゃべり・サロン』が居間、『寝室』は住み慣れた自分の家、『シニア食堂・朝市』が台所という形で整備したい。介護専門職、利用者、そして地域住民がお互いに支え合う町づくりを実現したいのです。国が掲げる地域包括ケアシステムのモデルケースとして、枚方市から全国へ発信できたら、と考えています」

団塊の世代が後期高齢の75歳を迎える2025年問題というのがあります。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という超高齢社会の到来です。医療と介護の安心が根底から覆る時代です。

「そんなに先の話ではありません。あと9年です。施設に入るのが限界を超え、自宅介護をサポートする仕組みも本気で考えなくてはなりません。地域全体で助け合う包括ケアシステムを今から構築する必要があるのです」

筆者(左)の質問に元気に答える谷口社長

そのために谷口社長は、今度は銀行から4億円を借り入れたそうです。こんなに借りちゃって大丈夫なのか、と心配にもなるそうですが、谷口社長の周りには、元大手の繊維会社や医薬品会社にお勤めされていた「特任教授」の方が控えています。

ある大手企業のOBは、介護送迎車の運転手さんだったりします。こうしたブレインたちに支えられ、ご近所力が結集した「地域包括ケアシステム」が立派に構築されるのも、そう遠い先のことではないと思います。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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