大人が「絵本」を読んで得られる意外な気づき 子どもに読み聞かせるだけじゃもったいない

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こうした中、やっと見つけたのは、少数の絵本から注文を受けてくれる喫茶店や雑貨屋などを専門に卸している取次。しかし、この仕入れ先の場合、通常書店が享受できる「返品制度(本が売れ残った場合、出版社に返品できる制度)」を採用しておらず、すべて買い取ることが条件。販売価格に対する本の仕入れ価格(掛け率)も高く、仕入れ販売しているだけでは儲からない懸念がありました。

そこで、石井は自ら「ニジノ絵本屋レーベル」として絵本を刊行することを決意。時を同じくして、絵本の出版を夢見ていた、イラストレーターユニット「はらぺこめがね」と出会います。出版の経験はなかったものの、はらぺこめがねと絵本の内容を話し合いながら作成を進めたり、印刷工場を探したりすること6カ月、2012年に『フルーツポンチ はらぺこ印①』の出版にこぎ着けました。

インテリアやコレクションにも

リアルな食べ物の絵やかわいらしいキャラクター、ポップな色彩――。イラストレーターならではの工夫にあふれた絵本の反応は上々で、とりわけ絵本に出てくる「うちゃっぷ」などの独自に考えた擬音語はまだ言葉の話せない乳幼児に喜ばれました。

また、ターゲットを子どもに絞らず、絵本のサイズや体裁にもとことんこだわった結果、絵本という枠を超えてインテリアの一部として、喫茶店やセレクトショップのような場所でも取り扱われるようになりました。好きな画家の画集を欲するように、大人からは「コレクション」としても注目を集めました。

はらぺこめがねとは翌年2月にも第2弾の『すきやき はらぺこ印②』をリリース。このほかにも、複数の作家とタッグを組んで、これまでに「ニジノ絵本屋レーベル」として5冊、ニジノ絵本屋が出版協力したファミリー絵本として1冊を出版。こうした絵本はニジノ絵本屋で販売しているだけでなく、一般の書店にも卸しています。

もうひとつ変わった取り組みが、絵本LIVEです。きっかけは、スタッフの提案。当時舞台女優として活躍していたスタッフがいたこともあって、5年前から「絵本を使ったエンターテインメント」が始まったのです。現在では、多くの保育機関やイベントで絵本の読み聞かせを行っているほか、「ニジノ絵本屋キャラバン」と銘打って、ミュージシャンや役者と手を組み、新たな絵本の「魅せ方」を追求しています。

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