ミクロ経済学Expressway 八田達夫著

本書は、2008年から2009年にかけて刊行された同著者による『ミクロ経済学Ⅰ』『ミクロ経済学Ⅱ』(プログレッシブ経済学シリーズ)が1冊にまとめ直されたテキストです。まとめ直すにあたっては、単純に「章」を抜き出したのではなく、再構成が行われ、現実の日本経済の課題に対応するように、大幅な加筆修正が加えられています。

たとえば、地球温暖化対策は「外部不経済」の問題として第8章で扱われています。また最近の注目テーマである、日本の電力料金(公共料金)については、その決定過程が総括原価主義に基づいて説明され、コスト引き下げのインセンティブが働かないがゆえに非効率が解消されない原因が、「規模の経済:独占」の問題として第9章で扱われています。その他にも本書を通して、現実の経済問題と経済学が密接にかかわり、また解決をはかるうえでも経済学が有用であることが明らかにされていきます。

本書では、経済学とは「人間生活の物質的側面を向上させるための経験科学」であると位置づけたうえで、ミクロ経済学であつかう「個々の家計・企業・産業の諸活動や、市場における政府の役割を分析」する際の経済理論について、需要曲線・供給曲線を用いた余剰分析の概念を用いて第1章から第5章の前半部分で学びます。その余剰分析の概念に基づいて、「独占や公害に対して政府はどう介入すべきか、高速道路料金はどのように決めるべきか」などの効率化ももたらす現実の日本の経済政策の問題点と解決策を学ぶのが、第6章から第12章です。そのうえで、現実の解決策を決定する際の所得再分配と効率化政策の関係が第13章と第14章で示され、終章「政治家と官僚の役割分担」にいたります。

PDFファイルとして公開されているのは、「はしがき」「目次」、および序章「市場と政府の役割分担」と第4章「生産者余剰、可変費用、帰属所得」です。序章では、本書の目的というよりも経済学そのものの目的が示されます。財やサービスの配分には市場が有効ではあるが、それが失敗することもある(市場の失敗と政府の失敗)。そのときに経済学はどのような役割を果たすべきかが示されます。第4章は、本書の分析の中核をなす生産者余剰を扱った章です。加え、経済学でいう「利潤」と会計学でいう「利益」の違いが説明されていることに特徴があります、すなわち、「利潤」と「利益」の概念が異なっているのは、費用の概念が異なっていることに由来し、その費用の差が「帰属所得(陰費用)」にあることが、図表に基づいて簡潔にまとめられ、ビジネスパーソンの疑問にも答えられる内容となっています。

現実の日本の経済政策問題が数多く分析され、加減乗除以外の数学を用いていない本書は、「独習書」としても最適であり、「経済学が日本の知識人にとって最も必要な教養」であることが実感されるテキストとなっています。

はしがき、目次、序章、4章を無料公開!
こちらから ご覧ください。

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