相次ぐ提携発表 ついに幕開け!? 「銀行再々編劇」

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くすぶる再編観測

一方、フラワーズ社はTOBによる普通株式の買い取り最大1523億円と、ニューマネーとなる第三者割当増資500億円(普通株式、08年3月払い込み予定)の合計2023億円を新生銀行に投じる。すでにフラワーズ社の創業者であるクリストファー・フラワーズ会長らが保有している普通株10.4%と合わせ、新生銀行の発行済み株式を最大で32.6%握る計算となる。新生銀行は増資資金について「全国約30カ所しかない店舗網の増強やノンバンク分野の戦略投資に使っていきたい」(同行)としている。

資金の出し手となったフラワーズ社は、サブプライム問題で経営危機に陥った英国のノーザンロック銀行や、米国の奨学金貸し付け大手のサリーメイ買収で名前の挙がっている投資ファンドだ。50歳になるフラワーズ氏は、ゴールドマン・サックスのパートナーを経て01年にフラワーズ社を創設した。これまでも大株主であり、同行株を「長期的に保有する」(同行のポルテ社長)とみられるが、ピーク時900円を超えた株価は足元400円を切り、投資家としての成果は得られていない。

フラワーズ氏は新生銀行の役員の一人でもあり、今回のファイナンスは「一種のMBO」(新生銀行幹部)に見えなくもない。プライベートエクイティ(未公開株)投資を得意とするフラワーズ氏にしてみれば、株式をいったん非公開化し、再上場でキャピタルゲインを狙いそうなものだが、同行は経営破綻で上場廃止になり、04年に再上場を果たした過去がある。フラワーズ社が出資比率を32%と中途半端な水準にとどめた背景には、同じ手法を二度と使えない事情もあるようだ。

今回の提携や資本増強を決めた3行には共通点が多い。住友信託は親密先の消費者金融大手アイフルグループに対し、合計で約2100億円(9月末時点)の融資残を抱える。新生銀行もグループ傘下のノンバンク、アプラスとシンキの業績不振に苦しみ、07年3月期は連結最終赤字に転落。経営健全化計画を達成できなかった。

一方、あおぞら銀行には約2300億円、新生は2169億円の公的資金がいまだに残る。同じく2.3兆円の公的資金残があるりそなホールディングスや、3600億円余りを抱える中央三井トラスト・ホールディングス、独立路線を歩んできた住友信託銀行を主役に、「公的資金返済を契機に再編が起きるのではないか」との見方がある。新生とあおぞら両行は、今回の業務提携が資本提携へ発展する可能性を否定しているが、単独での生き残りは相当厳しいのも事実だ。銀行再々編劇の引き金になる可能性はある。

(撮影:吉野純治)

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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