「象徴天皇の務めが安定的に続くこと念じる」

天皇陛下のお言葉全文

 8月8日、天皇陛下は午後、象徴としての務めについてのお気持ちを表明し、「次第に進む身体の衰えを考慮すると、全身全霊で象徴の務めを果たすことが難しくなるのではないかと案じている」、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく安定的に続くことを念じる」と話された。写真は都内で昨年12月撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

[東京 8日 ロイター] - 天皇陛下は8日午後、象徴としての務めについてのお気持ちを表明し、「次第に進む身体の衰えを考慮すると、全身全霊で象徴の務めを果たすことが難しくなるのではないかと案じている」、「象徴天皇の務めが常に途切れることなく安定的に続くことを念じる」と話された。

天皇陛下のお言葉の全文は以下のとおり。

戦後70年という大きな節目を過ぎ、2年後には平成30年を迎えます。

私も80(歳)を越え、体力の面などから様々な制約を覚えることもあり、ここ数年、天皇としての自らの歩みを振り返るとともに、この先の自分のあり方や務めにつき、思いをいたすようになりました。本日は、社会の高齢化が進むなか、天皇もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、天皇という立場上、現行の皇室制度に具体的に触れることは控えながら、私が個人としてこれまでに考えてきたことを話したいと思います。

即位以来、私は国事行為を行うとともに、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましいあり方を日々模索しつつ過ごしてきました。伝統の継承者としてこれを守り続ける責任に深く思いをいたし、さらに日々新たになる日本と世界のなかにあって、日本の皇室がいかに伝統を現代にいかし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています。

そのようななか、何年か前のことになりますが、2度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが国にとり、国民にとり また、私のあとを歩む皇族にとり、良いことであるかにつき、考えるようになりました。すでに80を越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む身体の衰えを考慮するとき、これまでのように全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないかと案じています。

私が天皇の位についてから、ほぼ28年、この間私はわが国における多くの喜びの時、また悲しみの時を人々とともに過ごしてきました。私はこれまで天皇の務めとして何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事にあたっては時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきました。

天皇が象徴であるとともに国民統合の象徴としての役割を果たすためには天皇が国民に天皇という象徴の立場への理解を求めるとともに、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民とともにある自覚を自らのうちに育てる必要を感じてきました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として大切なものと感じてきました。

皇太子の時代も含め、これまで私が皇后とともに行ってきたほぼ全国におよぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支える市井の人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって天皇として大切な国民を思い、国民のために祈るという務めを人々への深い信頼と敬愛をもってなしえたことは、幸せなことでした。

天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為やその象徴としての行為を限りなく縮小していくことには無理があろうと思われます。また、天皇が未成年であったり、重病などによりその機能を果たしえなくなった場合には、天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりにいたるまで天皇であり続けることに変わりはありません。

天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにもみられたように社会が停滞し、国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。さらにこれまでの皇室のしきたりとして、天皇の終焉にあたっては、重い、もがりの行事が連日、ほぼ2カ月にわたって続き、その後、喪儀に関連する行事が1年間続きます。その様々な行事と新時代にかかわる諸行事が同時に進行することから、行事にかかわ人々、とりわけ、残される家族は非常に厳しい状況下におかれざるを得ません。こうした事態を避けることはできないものだろうかとの思いが胸に去来することもあります。

はじめにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうしたなかでこの度、わが国の長い天皇の歴史をあらためて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民とともにあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。

国民の理解を得られることを、切に願っています。

 

(石田仁志)

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