ガラパゴス日本の頼みの綱はヤンキー大王だ 連銀の利上げ観測復活が日本株の側面支援に

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どの国でどんなリスクがあっても、円が買われ、日本株が売られ、すると円がまた買われる状況だ。結果として、世界の多くの国の株価が持ち直し傾向を強めているなか、日本株だけが冴えず円も全面高になっている。日本の投資家は、日本株を買っても損、海外の株式や債券を買っても円高で損をする事態に陥っている。7月5日付の日本経済新聞の記事で、こうした日本だけダメダメの状況を、シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストが「円高・株安が連鎖する日本独自の『ガラパゴス均衡』に陥った」と的確に指摘しておられた。

ガラパゴス日本が苦境から抜け出す手助けをする、頼りになる友人はいないのだろうか。欧州のエウロペ姫は、マクロ経済低迷、金融機関の経営不安説がたびたび表れそうなうえ、政治的にもガタガタしそうで頼りになりそうもない。やはり、米国ヤンキー大王の安定感に支えてもらうしかなさそうだ。週末8日に発表された6月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比で28.7万人増と大きく伸びた。

ヤンキー大王はいつも優しくはない

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失業率が悪化したことや、5月分の雇用者数前月比が、先月発表時の3.8万人増から1.1万人増に下方修正されたことなどから、米ドル円相場の反応は冴えなかった。しかし今後、実体経済の堅調さに沿う形で米国株価が上昇し続け、連銀の利上げ観測が復活すれば、今は円高気味の為替相場も米ドル高に向かうと予想する。ヤンキー大王の力強さに支えられて、日本というガラパゴス市場にも光明が差すだろう。

ただし、ヤンキー大王は11月の大統領・議会選挙にかけて、自国内向けに、米ドル高の抑制により米輸出企業の雇用を守る、という「公約」を強く押し出す展開が見込まれる。予想通り足元から米ドルが上昇しても、いつまでも円安を許してくれるわけではない、という点には留意すべきだろう。大王は優しくはない。今週は米雇用統計を転機として、当面米株高・米ドル高の流れが生じ、それが日本株を側面支援すると見込む。今週の日経平均株価は、1万5200~1万6000円を予想する。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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