世界に先駆けて次世代モビリティ社会を実現する 佐瀬 真人 デロイト トーマツ コンサルティング パートナー

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モータリゼーションと公共交通機関の発展が同時に進んだ交通理想都市、東京。今、環境問題や高齢化問題など、新たな問題に直面しているが、これらを克服することができれば、これから世界各地に勃興するグローバル巨大都市の先駆的モデルとなる可能性を秘めている。

佐瀬 真人(させ・まさと)
デロイト トーマツ コンサルティング パートナー
自動車セクターリーダー(デロイト トーマツ コンサルティングおよびトーマツグループ)。自動車業界企業に対する競争戦略立案、技術戦略立案、組織・プロセス設計に関するコンサルティングに従事。近年は次世代自動車の普及に伴う業界構造の変化に対応した、成長戦略/新規事業立案や異業種企業の参入戦略などに注力。著書に『戦略のパラドックスへの解』(共著、翔泳社)、『図解 次世代自動車ビジネス早わかり』(共著、中経出版)がある。

交通課題先進国、日本

グローバル巨大都市の増加に伴って生じる、さまざまな交通課題。それらを解決する交通ソリューションとして、次世代モビリティの姿が明らかになりつつある。とりわけ注目したい都市は、ほかならぬ日本であり、東京だ。グローバルに見たとき、東京は交通において非常にマチュア(成熟した)な都市だといえる。言い換えれば、各グローバル都市に先駆けて、さまざまな交通課題に直面しているということだ。そのため東京は、交通ソリューションに関しても、世界一の先進都市なのである。

この事実は、今後日本が新興国を中心に勃興する巨大都市に対して、先駆者の立場から価値を提供できる可能性を秘めているということにほかならない。本稿では日本がグローバルビジネスにおいて大きな存在感を示せるであろう、次世代モビリティ社会の実現に向けた、現状と今後の展望について概観する。

モータリゼーションの波と、脱クルマ社会へのトレンド 

まず、各国の巨大都市が置かれている状況を確認しておきたい。1つの軸としてモータリゼーション(自動車化)度合いがある。各都市とも、経済発展が進むにつれて、モータリゼーションが進み、自動車中心の交通が発達していく。日本の場合、人口1000人当たりの自動車保有台数は500~600台である。パリ、ロンドンなど欧州の都市も同様の水準だ。米国都市はさらにモータリゼーション度合いが高く、「1人1台」の自動車社会である。上海、ダカール、チェンナイといった新興国都市においても、今後の経済発展に伴い、モータリゼーション度合いが高まっていく見込みだ。 

そこに「公共交通分担度合い」というもう1つの軸を加えると、東京という都市が際立った存在であることがわかる(図表1)。「公共交通分担度合い」とは、電車やバスなどの公共交通機関をどれだけ利用しているかを表すものだ。米国、欧州都市は20%前後であるところ、東京は50%強という高い水準を示している。

ここから何がいえるのか。それは、東京はモータリゼーションが進んだ都市でありながら同時に公共交通機関も利用する、バランスの良い都市だということだ。個々人の移動を考えた場合、マイカーは移動の自由度・快適性の観点では非常に優れた交通手段といえる。他方でモータリゼーションの行きすぎた進展は、渋滞や事故、環境汚染などで社会の持続的成長に弊害をもたらす。

公共交通を主軸とした交通体系のなかで、必要なときだけクルマを使うという両者のバランスを図ることで、都市の持続的な成長と、個々人の移動の自由を両立する。近年、こうした全体調和型の交通システムの確立が世界的にうたわれつつあり、東京はその最先端を行く「交通理想都市」といえるのであり、各国が交通課題を解決していくにあたってのモデルケースになると予想される。各グローバル都市も、やがて東京の後を追うように「次世代モビリティソリューション」を志向していくのである。

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