クラウド・コンピューティングが与えるグローバル経営のインパクト 八子 知礼 デロイト トーマツ コンサルティング パートナー
急速に普及が進むクラウド・コンピューティング
近年、IT業界ではクラウド・コンピューティング(以下、クラウド)が注目されている。クラウドとは、コンピュータ処理を必要なときにだけ、ネットワーク経由で利用するモデルのことで、セールスフォース・ドットコム、マイクロソフト、グーグル、日本だと富士通やNTTコミュニケーションズなどが、主なベンダーである。
クラウドの概念や技術自体は以前より知られていたが、ここ数年ほどの間に企業が扱うデータ量が爆発的に増えたことから、その注目度が急激に高まった。世界でやり取りされるデータの総量は2009年の段階で0.8ゼッタバイト。それが2020年には35ゼッタバイトに到達する見込みだ。ゼッタバイトとは電気屋の店頭で売られている1テラバイトのハードディスクの10億倍に相当する。ここまでのボリュームになると、一企業が自社だけでデータを管理することが難しい。一方で、取り扱いデータ量が増えたことでデータセンターにおける単位当たりのデータ管理コストが大きく下がり、特にリーマンショック後、コスト削減を迫られた企業にとって、ITの領域を見直す際にクラウドの魅力が高まった。こうして多くの企業が、膨大なデータを自社で抱え込まず、クラウド上に移行するようになったのである。