シェールガスの対日輸出へ米国は前向き TPP不参加なら後回しも

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ガスの開発者やLNG基地の運営者は、輸出拡大による需要増で価格が上がれば潤う。現状は、ガスが想定以上に生産されて価格が想定以上に下落したため、いくぶん底上げしたいのが彼らの本音だ。また、石炭関係者もガスが石炭並みに値下がりしたことで競争上不利な立場にあり、ガス価格上昇は歓迎。州政府もガス輸出・生産拡大による税収増、雇用増への期待が大きい。

一方、輸出拡大に反対なのが石油化学メーカーで、原料のガス価格上昇を警戒している。ただ、シェールガスの生産が本格化する前の米国内のガス価格が今の3倍前後だったことを考えれば、多少の値上がりは許容範囲だろう。

米国エネルギー省は12月5日、LNG輸出問題に関して外部に委託して作成したレポートを公表。その骨子として「いかなるシナリオでも、米国にとってLNG輸出はプラス効果がマイナス効果をつねに上回る」、「LNG輸出によって悪影響を受ける産業・雇用の範囲は極めて限定的」と述べている。少なくとも日本には追い風の内容だ。2カ月半にわたる意見公募の受け付け終了後の、エネルギー省の動きが注目される。

実際の輸出は16年以降、TPP不参加なら後回しも

日本が米国産ガスを輸入するメリットは大きい。現在、日本のLNG輸入価格は平均15.5ドル程度(100万英国熱量単位当たり)。米国のガス価格は現状3ドル台なので、液化、輸送コストを6ドルとしても、10ドル程度で輸入できる。

日本企業が参画する米国内プロジェクトの商業生産開始は2016年以降とはいえ、輸入が許可されるだけで、中東や東南アジア、豪州、ロシアなど既存の産ガス国、メジャーとの契約交渉にも有利な影響を与えよう。最近、関西電力がBP(英国系メジャー)との間で米国天然ガス価格(ヘンリーハブ)に連動した価格での長期契約で合意したのは、規模が限定的とはいえ画期的な話だ。米国からの輸入見通しを背景に、今後もこうした新しい体系での契約交渉が相次ぐとみられる。

日本の新政権が環太平洋経済連携協定(TPP)に対してどう対応するかも焦点。多国間での包括的なFTAといえるTPPに参加しなければ、米国からのLNG輸入においても順番が後回しにされる可能性が高い。

環境リスクは大きな制約とはならない見込み

米国内の一部ガス採掘地域で問題になっている環境リスクについては、大きな制約にはならないだろう。水質汚染については、水質検査や水の再利用、グリーンケミカル(無害な化学物質)使用の徹底で問題視されなくなっている。

最近懸念されているのは、シェール(頁岩)層を水圧破砕した時に断層に当たって地震が起きる可能性だが、通常は地質調査をして断層を避けたうえで開発を進めており、やみくもに開発しない限り防止できるはずだ。

いはら・まさる●1983年東大工学部卒、旧石油公団(現JOGMEC)入団。94年東大工学博士号取得。ヒューストン事務所長などを経て、2008年より現職。著書に「シェールガス革命とは何か」(小社刊)など。

(撮影:尾形 文繁)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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