迫る最後の審判、英国はEU離脱か残留か 日本時間で金曜日の午後に結果が判明

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2014年のスコットランドの住民投票時のように、離脱時の混乱を恐れた態度保留者が無難な現状維持(=残留)に投票することに期待する声も多い。だが、スコットランドの住民投票の投票率は84.6%もの高水準に達したのに対し、今回の国民投票は70%前後にとどまると言われている(昨年の総選挙は66.1%)。危機バネの働き方はスコットランドの時ほどにはならない。

離脱派の猛追を受けた先週の金融市場の動揺も、離脱時の経済混乱に対する残留派の警告が無視できないとの受け止めにつながり、残留派が盛り返す一因となっている可能性がある。ただ、一般に残留支持が高めに出やすいことが知られている電話調査でも、離脱派が残留派を上回る調査結果が相次いでいる。投票の行方は依然として予断を許さない。

離脱派が優勢な地区の開票は終盤に集中

注目の投票結果は日本時間(以下同じ)の金曜日の午後に判明する模様だ。公式の出口調査は予定されておらず(前回の国民投票が1975年で、精度の高い調査ができないため)、382の各投票所の開票結果が順次発表される。一部のヘッジファンドが世論調査会社に独自の出口調査を依頼しているとの報道もある。その結果がどの程度「市場の噂」として漏れ伝わってくるかは不明だが、相場の撹乱要因となる恐れがある。そもそも、今回の国民投票でも世論調査はアテにならないというのが定説だ。世論調査以上に精度の確保が難しい出口調査の結果を鵜呑みにしていいかは判断の分かれるところだろう。

選挙管理委員会が発表する各投票所の開票見込み時刻によれば、金曜日の正午時点で75%、午後1時時点で91%、午後2時時点で97%、午後3時時点で100%の投票所の結果判明を見込んでいる。残留派が優勢な地区の開票時刻が比較的早く、離脱派が優勢な地区の開票時刻は全般に終盤に集中している。当初、残留派が優勢との開票速報が出たとしても、接戦となれば最後の最後に逆転のような展開も考えられなくもない。当日は開票結果に一喜一憂し、まず東京市場から相場が乱高下する恐れがある。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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