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ダイソン、イノベーションの着想法 「あっ」と驚くアイデアはどこから生まれるのか

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オリジナリティあふれる製品によって、家電市場において独自の地位を築いているダイソン。先進的な機能のみならず美しいデザイン性からも、同社の製品を愛用するユーザーは多い。しかしここで素朴な疑問が生じる。「なぜ、ダイソンだけが独創的な製品を生み出し続けられるのか?」。誰もが「あっ」と驚くアイデアはどこから生まれるのか。そうしたアイデアはどのように製品に生かされているのか。そこでダイソンのイノベーションの源流、着想法の秘密についてダイソンUKのエンジニアで研究デザイン開発を担当するヒューゴ・ウィルソン氏とブランド担当者に話を聞いた。

課題の本質を徹底的に追求し
デザインとエンジニアリングで解決に導く

「吸引力の変わらない掃除機」や「羽根のない扇風機」など、従来の常識を覆すイノベーティブな製品を数々と生み出し続けるダイソン。なぜ彼らは固定観念にとらわれず、オリジナリティあふれる製品を生むことができるのか。同社のヒューゴ氏は「研究とデザイン、そして開発こそがダイソンの心臓部であり、イノベーションを起こし続けることのできる理由」だと述べる。

研究デザイン開発デザインリード/ヒューゴ・ウィルソン

ダイソンの文化を一言で表すなら「エンジニア中心主義」。ブランド担当者はその源流に創業者であるジェームズ・ダイソン氏の思想があると語る。「ジェームズはインダストリアル・デザイナーとして当たり前を疑い、疑問を掘り下げることをこれまで一貫して続けてきました。そこから見つかる課題をいかに解決するか、そこではじめて必要なデザインやエンジニアリングが導き出される。世間一般のマーケティング的発想とは正反対で、解決すべき課題の本質を追究することこそがダイソンのイノベーションの根底にあるもの。そうした思想や文化が私たちの強みだと考えています」。

現在発売中のヘアードライヤー「Dyson Supersonic」は従来製品が持つ「高温の熱によって髪が痛む」という課題を解決すべく生まれた製品。送風口付近にガラス球サーミスターを搭載し、毎秒約20回の頻度で温度を計測。その情報をもとにマイクロプロセッサーがヒーターの温度を制御し風の温度を一定に保つ「インテリジェント・ヒートコントロール機能」によって過度の熱によるダメージを防ぎながら、他のヘアードライヤーよりも短時間で髪を乾かすことを可能にしている。

羽根のない扇風機は
当たり前を疑うゼロベース思考から生まれた

2009年に発売され大ヒットを記録した羽根のない扇風機「Air MultiplierTM」シリーズもダイソンの思想を引き継ぐ代表的な製品のひとつ。「扇風機の目的は心地よい風を送り届けることですが、従来製品に必ず備わっていた羽根にはさまざまな問題がありました。均一な送風を行えないこと、メンテナンスにかかる労力、回転する羽根の危険性。そこでこうした課題を解決すべく、羽根をなくすことをスタートに扇風機の開発へ着手したのです」(ブランド担当者)。

常識と考えられてきた扇風機の羽根をなくし、リングの中に周囲の空気を巻き込みながらモーターで加速して風を発生させることでムラのない均一な送風を実現。もちろん羽根がないため、そこにまつわるメンテナンスや危険性を気にする必要もない。こうした機能性がデザインの美しさと共に評価され「Air MultiplierTM」シリーズは瞬く間に大ヒット製品となった。

その後、2015年には「Air MultiplierTM」をベースに空気清浄機能を加えた「Dyson Pure CoolTM 空気清浄機能付ファン」を発売。同製品ではAir MultiplierTMテクノロジーで室内の空気を循環させる一方、他の空気洗浄機とは異なり微細なPM0.1レベルまで99.95%まで除去することができる。

「Pure Cool」の開発に携わったヒューゴ氏はその特徴について次のように語る。「同製品には流体力学やろ過システム、ソフトウェア技術などこれまでダイソンが培ってきたノウハウが凝縮されています。360˚グラスHEPAフィルターはアレルゲンや汚染物質を0.1ミクロンまで取り除き、清浄された空気を室内にまんべんなく送り出すことができるのです」。

「Pure Cool」をアップデートして今春発売した「Dyson Pure Cool linkTM 空気清浄機能付ファン」ではさらに室内の空気状態をモニタリングできる「Dyson Linkアプリ」機能や就寝中も自動運転で眠りを妨げない「ナイトモード」を搭載。「アプリによってユーザーは空気の状態やフィルター寿命などを可視化することができます。外出先で会っても無線LANを用いることでリアルタイムに状況を知ることができる。ユーザーに最高の顧客体験を与えるため、ハードウェアとソフトウェアを統合することで生まれた機能、それがDyson Linkアプリです」(ヒューゴ氏)。

「Dyson Linkアプリ」機能

日本は高温多湿な環境から世界でも類を見ない「空調カテゴリーの先進国」(ブランド担当者)。加えて近年では中国のPM2.5やインフルエンザの流行など空気洗浄に対する関心が強く「Pure Cool Link」は安定した売れ行きを見せている。またアジア諸外国においてもそうした需要は高まっているという。

身の回りの「なぜ?」を追求することから
次のイノベーションが生まれる

世界ではじめて産業革命が起こり、かつては「ものづくり」発祥の地であったイギリスだが、少し前までは他国同様「エンジニア離れ」が進んでいた。そこでダイソンではエンジニアの地位を高め、再び憧れの仕事とするためさまざまな形で育成や啓蒙活動を行っている。「ダイソンはエンジニアが始めた会社であり、いまもエンジニアを非常に尊重している会社。本国イギリスでは30を超えるトップレベルの大学から科学者やエンジニアが集まり、現在その数は2500名以上に上ります」(ヒューゴ氏)。啓蒙活動の一環として世界各地で行っているワークショップの参加者はすでに2000名を超えており、こうしたものづくりに対する真摯(しんし)な姿勢が共感を呼び、今では世界各地から優秀な人材が集まるようになっている。

イノベーションの種は身の回りに転がっている。大切なのはそうした疑問を追求し続けることだとヒューゴ氏は語る。「普段の生活の中で感じた疑問や不便に思ったことを突き詰めて考える、見逃さないことがイノベーションの出発点です。私たちは日々たくさんの過ちを犯しますが、大切なのはそこから何かを学び取り次に生かしていくこと。ダイソンでもいま提供しているソリューションをベストのものと思わず、常によりよい方法を考え続けている。こうした『しつこい』姿勢こそが人々を驚かす製品の開発につながっているのだと思います」。

 

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