ツイッターで成り立つ町がスペインにあった 用事があれば役所にメッセージ

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もちろんツイッター本社がこの試みに気がつかないはずはない。ディック・コストロ前CEOは、退任後の昨年夏にフーンを訪れて、ツイッターのロゴと青い鳥がついたオベリスクの前に手型を残した。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、ツイッターから資金提供を受け、フーンの試みを研究している(フーン市はツイッターから資金提供を受けていない)。

市内にあるツイッターのモニュメント

たった1人になった町の警察官は

町の最後の1人の警察官になったフスト・オンティベロスは、この試みの恩恵をリアルに感じている。現在、住民から受け取るメッセージは1日約20通ほど。ほとんどはダイレクトメッセージだ。内容は、書類の書き方に関する質問もあれば、ドメスティック・バイオレンス(DV)や無謀運転の通報もある。

ツイッターの導入で、仕事に対するオンティベロス自身の満足感も高まったという。いまや道で住民にしょっちゅう声をかけられ、彼のツイートについて議論に花が咲く。「ツイッターは人々に、警察官のところにいって自分の問題を相談するパワーを与えた」とオンティベロスは語る。警察署のアカウントには、3500人以上のフォロワーがいる。

それでも住民全員がツイッターを受け入れているわけではない。専門家の間でも、ツイッターのような上場会社による行政サービスの提供支援が許されるのかと疑問視する声がある。

「行政の仕事を国際企業に外注した結果、市の雇用が減った――それを誇りに思うなんて、なにかおかしくないか」と、アムステルダム大学のリチャード・ロジャース教授(ニューメディア学)は語る。

それでも建築家のホセ・マリア・デラトレ・サルミエントは、書類作業に何週間もかけるよりも、ツイッターで手続きがすぐ終わるシステムのほうが、ずっといいと思っている。

「私は自宅で仕事をしていて、一日中インターネットを使っている。行政サービスの申請だって、ネットでできたほうがいいに決まってる」。

(執筆:Mark Scott記者、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Service

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