【特別対談】 日本の企業は“第二の創業”を経て世界でプレゼンスを高めよ 近藤 聡 デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー
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田北 浩章 東洋経済新報社 取締役編集局長

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ビジネスにおける「Japan」の存在感が低下している。製造業をはじめ、各国の企業からベンチマークされてきた勢いはなく、過去の成功体験が足かせとなっている感さえある。もう一度グローバルで輝きを取り戻すためには、何が必要なのか。日本企業が抱える問題点とその打開策について考える。
(左)近藤 聡(こんどう・あきら) 
デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー
自動車業界を中心に、企業戦略、オペレーション改革、海外展開戦略の策定・実行支援など、クロスボーダーを含むプロジェクトを数多く手掛けている。2010年代表取締役社長に就任。
(右)田北 浩章(たきた・ひろあき) 
東洋経済新報社 取締役編集局長
1984年慶應義塾大学経済学部卒業後、東洋経済新報社入社。産業記者、『ベンチャークラブ』『週刊東洋経済』『会社四季報』の編集長、編集部長、第1編集局次長兼証券部長、企業情報部長などを経て、2012年より現職。

国際的地位が低下した日本

田北浩章(以下、田北) 今、世の中で歴史がブームです。といってもそれほど昔ではなく、昭和史や20世紀についての本がよく売れています。何となく振り返らなきゃという気持ちがあるんでしょう。

近藤聡(以下、近藤) 私も最近読んでいるのが、チャーチルが書いた『第二次世界大戦』。驚くのが当時の日本の存在感の大きさです。英国人のチャーチルの目から第二次世界大戦へ向かう列強の姿を見たとき、米国やフランスと並んで極東の日本が普通に出てくるんですよ。その後、敗戦から見事に立ち上がり、Japan as No.1と評され、経済大国になったわけですが、バブル崩壊後、立ち直る契機を失したままです。日本の強さやプレゼンスが低下していることに、非常に忸怩たる思いが日本人としてあります。

田北 私は20年くらい前からサムスンの方と交流があるのですが、20年前の彼らはソニーをベンチマークにしていて、どうやってソニーを抜くかということに必死になっていた。でも今彼らと話していても、ソニーのソの字も出てきません。

求められる“第二の創業”

田北 よく「日本は米国など先進国の後ろ姿を見ながら走っている」と言われますが、僕はそうではないと思っています。実は日本は先頭ランナーとして、社会も企業も未知の領域を走っているのではないか。誰かをまねすることなんて、実はできないんじゃないかという気が非常にします。

近藤 おっしゃるとおりです。国内市場環境という観点から言えば、先例のないところに日本企業は置かれている状況です。だからこそわれわれは、現在の環境を受け止め、もう1回事業を立ち上げ直すという感覚を持たなければいけない。言葉は大げさかもしれませんが、いわば「第二の創業」です。日本は縮小傾向とはいいながらまだ自国のマーケットがあるから、何とかなるという感覚があると思います。しかし韓国が自国のマーケット規模の限界から追い込まれたときや、米国の企業が金融やITなどニューエコノミーに舵を切らなければならなかったときと同じ感覚を日本も持とうとすることが重要です。彼らは、日本企業の良いところを学習し、路線をチェンジした。日本の企業は、成功したときの路線をずるずると引きずったままという感覚があります。経営者の方々とお話ししていると、現在の環境や今後についての非常に切迫した感覚をお持ちなのですが、中期計画などを客観的に見ると、今までの延長線上の動きに見えてしまう。どうしても、グローバルの競争相手と比較すると、勝てるような計画になっていないなと感じます。海外の投資家の目線から見るとなおさらなのではないでしょうか。現状の「対韓国企業」とか、「対欧米企業」などという目前の競争にいかに勝つかということも重要ですが、長期的・歴史的な視野から、企業の存在意義レベルで眺めてみないと、環境や製品やビジネスモデルの激変に見舞われている環境への対応について腹に落ちる解はなかなか出てこない感じがします。現実に、ある日本の製造業の企業が、過去にどのようなフィロソフィーで工場のグローバル拡張を図ってきたのかを知りたいという問い合わせを韓国企業から受けたりします。この企業はこれから日本の企業が取り組んできた道を歩もうとしているわけですが、日本の企業の場合は、先例のないなかで、新たな成功の定義をどう描き、フィロソフィーを持って取り組んでいけるかということが重要だと思います。

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