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非連続性の経営――グローバル化の本質

楠木 建 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授

楠木 建(くすのき・けん) 
一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授
1964年東京都生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、Dynamics of Knowledge, Corporate Systems and Innovation、Management of Technology and Innovation in Japan(いずれも共著、Springer)がある。

眺望と点景

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ヨハネス・フェルメール『デルフトの眺望』
(1660~61年頃制作、デン・ハーグ、マウリッツハイス美術館所蔵)

この夏、アムステルダムに行く機会があった。電車で1時間の距離なので、ついでにデン・ハーグまで足を延ばした。目的はこの町にあるフェルメールの名作『デルフトの眺望』だ。

超人気画家だけに、日本でもフェルメールの展覧会は割と頻繁に開かれる。ただし、デルフトの南を流れるスキー河沿いの市街風景を描いたこの絵は、先方に何か方針があるのか、デン・ハーグを出ることはめったにない(らしい)。実物を見るためには、こちらから出向くしかない。

『デルフトの眺望』はデン・ハーグ駅の近くにあるマウリッツハイス美術館に収蔵されている。ところが、このときはマウリッツハイスが改修のため閉館中で、フェルメールの絵は割と離れたところにあるハーグ市立美術館で展示されていた。そこまで行くのが面倒だったのだが、行ってみると人が少なくてかえってよかった。

図版で繰り返し見てきた絵だが、実物を見て痺れたことは言うまでもない。よく知られているようにフェルメールは光の扱いが天才的なのだが、この肝心の光のすごさが図版ではどうしても味わえない。ナマの『デルフトの眺望』は文字どおり光り輝いていた。

ただし、実物鑑賞の最大のメリットは「絵そのものがよく見える」にあるわけではない。絵との距離を自由に選ぶことができる。ここに美術館で実物を見るいちばんの価値がある。

優れた絵ほどビシッと決まる鑑賞距離がある。絵に近づいたり離れたりしているうちに、だんだん最適距離がつかめてくる(混んでいる展示ではこういうことができないので、空いている市立美術館での展示はありがたかった。マウリッツハイスだったら、こうはいかなかっただろう)。最適距離で味わう『デルフトの眺望』の眺望にはたまらないものがあった。

よくいわれるように、この絵のすごさは河のこちら側の岸にいる点景の2人にある。遠景は明るく、河の向こう岸、近いところにある門や船や教会は、重たい雲が空を通過中のため暗い。こちら岸はニュートラルな明るさなのだが、そこに頭巾をかぶっている2人が立っている。白い頭巾が明るく光っている。

この辺が「光の天才」ならではの名人芸だ。ごく小さな点景なのだが、この2人がいるのといないのとでは、絵の力がまるで違ってくる。『デルフトの眺望』のツボは点景の人物にある。

絵を見るたびにいつも思うのだが、鑑賞最適距離は事前に想像するよりも、少し遠いところにあることが多い。『デルフトの眺望』はその典型だ。手前の人物に力があるので、まずは本能的にこの2人に顔を近づけてしまう。言うまでもないことだが、接近してそれだけ見れば、2人の重要人物はただの点景で、驚くほどあっさりと描かれている。鑑賞のフォーカスがばっちり決まるということと、近づいて絵の特定部分を見るのに集中するということは似て非なるものだ。

次ページ点景その1:英語
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