前回東京五輪を成功させた池田勇人の信念 真のリーダーシップとは何か

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幸田真音さんが今伝えたいこととは?
4年後に開催される2020年東京オリンピック。スポーツの祭典に期待が高まる一方で、開催が決定してから会場建設を巡る問題やエンブレムの盗用問題、そして誘致をめぐる疑惑など、多くのトラブルが報じられている。
そんななか、歴史経済小説の名手である幸田真音氏が、前回1964年東京オリンピック当時の首相である池田勇人を主人公にした小説、『この日のために 池田勇人・東京五輪への軌跡』を上梓した。「この日」とは、1964年10月10日、1964年東京オリンピックの開幕日だ。
われわれが「“次の”この日」に向けて先のオリンピックから学ぶべきことはあるのだろうか――。

当時も反対する声は大きかった

――2020年東京オリンピック開催まで、あと4年です。1964年の東京オリンピック当時の日本と現在の日本では、どのような違いがあるのでしょうか?

大きく違うポイントは三つ挙げられるでしょう。一つは背景になる日本経済の状況、そして人口の推移、最後が政治的背景です。

まず一つ目の経済ですが、現在の日本の成長率は毎年せいぜい1%前後、それどころかマイナス成長(リセッション)すら懸念される状況が続いています。一方で1960年代の日本は「黄金の60年代」と後に呼ばれるように、11%~12%という驚異的な二桁成長を続けていました。何年か前の中国などと同じで、当時の日本はいまでいうところのまさに極東の「新興国」だったのです。

二つ目の「人口」も大きく違っています。今の日本は世界に先駆けて少子高齢化に直面しており、人口減少、なかでも労働人口の減少が加速度的に進んでいます。それに対して60年代は、太平洋戦争で激減した人口の回復を含め、大幅な人口増加の時代を迎えていました。東京オリンピックの3年後(1967年)には総人口が1億人を突破。労働力人口の比率も今よりずっと高い状況でした。

三つ目の政治的背景も、当時と今では大きく違います。60年といえば日米安保闘争で国内が大混乱に陥った時期です。今回の小説の主人公・池田勇人の前に政権を担っていた岸信介首相が、国民の反対を押し切って強引にアメリカと新安保条約を結び、それに反発する学生たちが中心となって、激しい政治闘争が起きました。国会前に何万人ものデモ隊が集まり、機動隊との衝突で学生に死者も出るなど日本中が揺れに揺れたわけです。

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