シェール革命で日本のLPG価格は下がるか 価格崩壊で余った米国産はどこへ

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LPG(Liquefied Petroleum Gasの略であり、主にプロパンガス・ブタンガスを指す)は、原油や天然ガスのような日々紙面に出てくるメジャー商品ではないが、日本では欠くことのできないエネルギー源の一つである。読者の中にはLPGに馴染みのない方も多いと思うので、まずは日本のLPG事情について説明したい。

日本のLPG事情 -全世帯の半数がLPGを消費

LPGは、日本国内では全世帯のほぼ半数に当たる約2,500万世帯で使用されている欠くことのできないエネルギー源である。家庭用では一般的にプロパンガスが使用され、主な用途はガスコンロや給湯器などである。容易に液化して運搬できるというその特性から山間部や離島などでも消費され、国土カバー率はなんと100%となっている。

また、LPGは災害に強いエネルギーだ。東日本大震災ではわずか4日で復旧し、復旧が遅れた電気や都市ガスなどのライフラインに比べ格段の早さであった。

電気や都市ガスは送電線や導管に被害があると、そこから供給障害が発生するが、LPGはボンベが運搬できるところであれば、どこにでも供給できるという強みがある。避難所や病院向けだけでなく、仮設住宅へのエネルギー供給でもLPGは大きな貢献を果たしたのである。

ほぼ9割を中東に依存

さて、次に日本のLPGの需給について説明しよう。日本のLPG需要は年間約16百万トン、また輸入量は年間約12百万トンと世界最大の輸入大国である。(残りの4百万トンは国内製油所にて石油の精製から生産されている。)第2位の韓国の輸入量が6百万トンと日本の半分であることからも、日本の輸入量が飛び抜けて多いことがわかる。

ではどこからLPGを輸入しているのか?ということだが、なんとほぼ9割がサウジアラビア・カタール・UAEなどの中東産ガス国に依存しているのだ。他の主要エネルギーの中東依存度を見てみると、原油が9割、LNGは2割台であり、原油に並びLPGも中東依存度が高いのだ。

日本が輸入しているLPG価格はCP(コントラクトプライス)価格がベースとなっている。CPとは、サウジアラビアが1994年に導入した、輸入国(主として日・韓)の取引先と交わす契約価格のことを指し、現在は、国営会社であるサウジアラムコが取引先に“一方的”に通告してくるいわゆる生産者価格である。

その他の中東輸出国であるカタール・クウェート・UAEなども追随し、サウジCP価格として販売している。日本が輸入数量の9割も依存しているLPGの価格は生産者価格であり、原油のような需給が決定するマーケット価格ではない、ということは理解しておいてもらいたい。

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