阿蘇山「カルデラ噴火」が、日本を壊滅させる 火砕流に覆われる領域で700万人が「瞬殺」

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富士山噴火のハザードマップ

このハザードマップで想定しているのは、一番最近かつ歴史上最大規模の噴火の一つであった1707年の宝永噴火である。この噴火で噴出されたマグマは約0.7立方キロ、黒部ダムの貯水量の3倍にも及んだ。

富士山の場合、山頂の火口から噴火が起こるとは限らない。図にも示したように、北西から南東方向に走る割れ目に沿った側火口から噴火が始まる場合も多い。ハザードマップではこのような場合も想定して溶岩流の最大到達範囲や降灰の影響を示している。溶岩流は、1日から1週間程度で図に示した範囲に到達する可能性が高い。南東斜面で噴火が起きた場合には、沼津市の海岸にまで溶岩流が達するようだ。

最も懸念すべきは火山灰による被害だ

しかしこの想定噴火で最も影響が大きいのは降灰である。宝永の噴火は半月ほど断続的に続き、噴煙は最高10キロ以上まで立ち上った。江戸でも多い所では数センチもの火山灰が降り積もった。

しかし、気象庁がまとめた降灰による被害予想と、先の富士山噴火による降灰マップを見比べると、首都圏の混乱は明らかである。家屋への直接な被害は免れるとしても、少なくとも一部の地域ではライフラインが一時ストップする可能性が高い。関東地方の東名や中央道は通行止めになるし、首都圏の一般道路も除灰なしには使い物にならない。

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気象庁がまとめた降灰による被害予想

また、羽田空港は恐らく確実にマヒするに違いない。そのほかにも、火山灰が鋭い割れ目をもつガラス質の物質であることを考えると、江戸時代もそうであったように、呼吸器障害等の健康被害も心配である。もちろん、細粒の火山灰によるコンピュータなどのハイテク機器の作動不良も懸念される。

しかし、これらの被害の多くは備えをすることで相当部分は解消できるし、速やかな回復も可能である。世界で最も万全の水害対策を講じることに成功しつつある首都東京である。必ず起こる降灰災害に対しても、綿密かつ大胆な対策が望まれる。

その一方で、まったくマグマの噴出がないにもかかわらず、噴火に先立って大規模な火山災害を起こす現象がある。「山体崩壊」と、それによって発生する「岩屑なだれ」だ。1980年米国西海岸のセント・ヘレンズ山が崩れ去る様子は、ネット上の動画で見ることができる。また日本列島でも、1888年の磐梯山、1792年雲仙眉山の崩壊などが比較的最近の大規模な山体崩壊の例である。

磐梯山崩壊では岩屑なだれによって北麓の村々が埋没し、500人近い死者が出た。また後者では岩屑なだれが有明海に突入し、高さ10メートル以上の津波が発生した。これらによって約1万5000人の犠牲者を出したと伝えられている。「島原大変肥後迷惑」と呼ばれる有史以来日本最大の火山災害である。

このような山体崩壊は、もともとの不安定な地形に加えて火山活動や熱水活動で緩んだ火山体が、水蒸気爆発や地震によって一気に崩れるものである。富士山でもこのような山体崩壊が幾度となく起こってきた。山体周辺の地層の中に岩屑なだれの証拠が残っているのだ。たとえば2900年前の御殿場岩屑なだれや、約8000年前の馬伏川岩屑なだれなどである。もっと古い時代にも山体崩壊は起こっていたようだが、発生時期がよくわかっていない。

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