マッキンゼー男とボスコン女、NPOを創る 新世代リーダー 小沼大地、松島由佳

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留職の普及、企業内の活性化、企業を越えた繋がり。その先に二人が描く世界とは、どのようなものだろうか。

小沼さんは即答した。「課題先進国から、課題解決先進国へ」。

少子高齢化、財政難、さまざまな課題が多様化・複雑化し、課題の量は世界トップクラスの日本。2人が描くのは、課題に対しあきらめるのではなく、分野を超えて人間がつながり、「じゃあこうできる」と前向きに解決していく未来図だ。さらに将来、ほかの国が同じ課題を抱えたときに、ノウハウを輸出することができる。それが、「課題解決先進国・日本」のイメージだ。

「そのためにも、NPO・企業・行政の3つのセクターが柱になり、3つの行き来を活発にしていくべきだと考えます。現在留職は企業とNPOをつなげていますが、将来的には行政を加えた3セクター間での留職にも取り組みたい」(小沼さん)

「本流の中の傍流」だからできること

たとえば厚生労働省の人が育児系のNPOで働く、文部科学省の人が学校で教鞭を執るなど、行政の職員にも、社会の現場に出て課題解決の「原体験」を広げていきたいという。その結果、行政がより現場に近い視点を持てるだけでなく、企業とNPOで生み出した新しい価値を拾い上げ、規制を変えたり補助金を出すなど、幅広い役割を担っていける。

「そんな未来が実現するために、一つひとつ丁寧に取り組んでいきたい。クロスフィールズで働く仲間も増え、NPOとしてもこれからが勝負です。個人的には、日本のNPOをもっと盛り上げたいですね。将来人気就職先の上位にNPOが入るように」(松島さん)

進学校、名門大学を卒業した2人。同級生の多くは大企業に進んだ。もし仮に、その流れを本流と呼ぶなら、NPOを起こし奮闘する2人は、その中から生まれてきた傍流かもしれない。

「本流の中の傍流」。だからこそ、異なるセクターを理解し、つなげることができる。クロスフィールズという社名にも投影されている、既存の枠を超えてつながる未来。それが不可能ではないと信じさせてしまう何かを、小沼さんと松島さんは持っている。

(撮影:今井康一)

本間 美和 フリーライター

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ほんま みわ

1976年生まれ。(株)日立製作所のシステム営業を経て雑誌編集者に。2003年より(株)リクルート『ゼクシィ』編集部、2006年より(株)講談社『FRaU』編集部所属。 2009年末より夫と約2年間、世界一周の旅に出る。帰国後はNPO法人HUGを立ち上げ、東北復興に携わる人・団体の情報発信を行う『東北復興新聞』を発行、編集長を務める。夫との共著『ソーシャルトラベル 旅ときどき社会貢献。』(自由国民社)が12年12月5日に発売。

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