麻布生は中1から領土問題を論じます 麻布学園 氷上信廣校長に聞く

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麻布生は中学1年から領土問題を論じる

――とにかく自由な校風ばかりが有名ですが、進学実績でも目立って優秀です。何か特別な指導をしているのでしょうか

進学に向けて特別な指導をしていることはありません。むしろ、そういう知識の詰め込みのような教育、いわゆる先生から一方的に知識を「授ける」という意味での「授」業とは真逆の教育をしています。授業の進行も生徒同士のディスカッションを重視したり、自分の意見をはっきりと述べることができるような教育方法を採用しています。

氷上信廣(ひかみ・のぶひろ)
麻布学園校長
早稲田大学政治経済学部卒業。同大学院政治学研究科修士課程終了。ドイツマールブルグ大学(哲学科)に留学。1974年私立麻布中学・高等学校社会科・公民科の教師を経て2003年より同校校長。

例えば中学1年で教える社会ですが、麻布では「世界」と呼んでいる。内容は地理と歴史をミックスさせたような内容ですが、竹島問題や尖閣諸島にまで踏み込んで議論させています。「今」起きていることを知るために勉強しなければ、歴史も地理も学ぶ意味なんてありません。

だから「麻布に入ったら急に親に議論をふっかけるようになってきた」と親から言われます。子供が急に一丁前なツラして親にディスカッションを仕掛けてくるものだから、親も慌てて勉強しているようです。ですが、それも子供の立派な成長です。親はみんな嬉しそうですよ。

加えて麻布の特徴がもっともよく出ているのが、高1・2の必修で「教養総合」という科目を設けている点でしょう。これは他の学校にはない科目です。内容は、先生が教えたいことを教えていいというゼミ形式の授業です。生徒側からのリクエストも受け付けています。ドイツ語、ラテン語など40講座以上もあります。中にはロボット作り、映画『バックトゥザフューチャー』研究、ボウリングなんていう講座もあります。

――教養総合はユニークですね。ドイツ語やラテン語はわかりますが、ロボット作りは特に大学受験とは関係ないですよね?

そうですね。まったく大学受験には役に立ちません。ですが、大学を出てからの方が人生は圧倒的に長いですから。大学受験をゴールと考えることなんてまったく無意味です。それよりもいかに独創的な人間を育てるかということに主眼を置いています。

私立男子校の進学校全般にいえることですが、どうしても似たような環境で育った生徒が集まってしまいがちです。親もある程度経済力があって、大学へ進学することを前提に子育てしている。そのような環境で大学受験だけの勉強をしていては均一な価値観を持った生徒しか育ちません。

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