天才かもしれない「ダメ社員」を覚醒させる術 「隠れアスペルガー」を知っていますか

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いつもの会議なのだから言われなくなってわかるだろう、と思うかもしれませんが、はっきり言ってもらわないと、彼らの中で渡された書類と会議がつながりません。もし、あなたの部下が前述したような口頭での指示に弱いタイプであれば、付箋などにメモ書きして指示を出すとより理解しやすくなります。

できないことを一つひとつ洗い出すことで、対応策も見えてくる

また、何もかもできないというわけではないことにも、理解が必要です。そして「できない」の裏に、「できる」が潜んでいることも多い。

たとえば、ほかに優先すべき仕事があるのに、いつまでもデータ入力をやっているという場合。単純作業であっても、集中したらとことんやるタイプだということが考えられます。こういう人材は、研究開発部や品質保証部など、実験や商品テストを繰り返すような部署に向いているかもしれません。

逆に、単純作業は苦手だけれどクリエイティブな能力を持っているというグレーゾーンアスペルガーもいます。その場合、思い切ってアシスタントを付け、本人がクリエイティブな仕事に集中できる環境を与えることで、一気に能力を発揮するようになることがあります。

これらはすべて、トライ&エラー

一つひとつ検証しながら、どれが適切かを見極める必要があります。これは気の長い作業であり、最初は面倒に感じるかもしれません。

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しかし、グレーゾーンアスペルガーがいったん能力を発揮したら、ほかの追随を許しません。また、グレーゾーンアスペルガーは周囲の理解がなかなか得られず、これまでずっとつらい思いをしてきたことが多いため、理解を示してくれた上司には、全力で尽くすケースが多いのです。

グレーゾーンアスペルガーの症状というのは、実は誰もが持っている性質です。普通の人より程度が大きいから扱いにくい。ただそれだけのことなのです。グレーゾーンアスペルガー用にとった対策は、普通の人にもそのまま使えます。つまり、ダメ社員用の対策が、チーム全体のミス軽減や効率アップに有効なのです。あなたの部署にも、困った部下はいないでしょうか。その部下は、もしかしたら、あなたの運命を左右する天才部下に化けるかもしれません。

吉濱 ツトム 発達障害カウンセラー

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よしはま つとむ / Tsutomu Yoshihama

幼少のころから自閉症、アスペルガーとして悲惨な人生を歩む。発達障害の知識の習得に取り組み、あらゆるアスペルガー改善法を研究し、実地に試す。数年後、「典型的な症状」が半減。26歳、社会復帰。同じ障害で悩む人たちが口コミで相談に訪れるようになる。以後、自らの体験をもとに知識と方法を体系化し、カウンセラーへ。個人セッションに加え、教育、医療、企業、NPO、公的機関からの相談を受けている。公式ブログ(blog.yoshihama-tsutomu.com/)

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