米国の経常収支は改善へ 米国シェール革命と日本《2》

拡大
縮小

 

--産業競争力の向上で特にメリットを受けるセクターは。

今後、米国の産業界では化学業界をはじめ、安価な天然ガスを利用しようという動きが強まる。10年から35年にかけての部門別の天然ガス消費見通し(EIA)を見ると、最も伸びが大きいのが発電用で、次に工業用、商業用と続く。オバマ大統領は製造業を国内に呼び戻す政策を積極化させているが、製造業はエネルギーを多く使う産業であり、恩恵は大きい。

新たに生まれる産業も注目される。米国では現在、天然ガス自動車の開発を促進する法案が審議されている。また、天然ガス価格低下で電力料金が下がることにより、電気自動車へのシフトも強まる。天然ガス車や電気自動車が普及すれば、石油消費が減り、さらなる貿易赤字削減にもつながる。

--雇用にも好影響が出そうですね。

シェールガス、シェールオイルを生産している地域は労働市場も良好だ。米国の地区別失業率を見ると、全米では9月で7.8%と高止まりしているが、ノースダコタ州は3.0%、ネブラスカ州が4.0%、オクラホマ州が5.1%など、シェールガス、シェールオイル生産が拡大している州の失業率は低い(州の失業率は8月データ)。生産には高度な技術力を必要とするので、エンジニアなど労働者の賃金も比較的高く、地域経済への波及効果が大きい。州別の経済成長率でも、最も伸びが高いのは資源の豊富な州となっている。

■60万人以上の雇用に波及

そのため、米国政府のシェール革命への注目度は高い。オバマ大統領は今年の一般教書演説で、「米国には今後100年近く賄えるだけの天然ガスの供給があり、私の政権はこのエネルギーを安全に開発するため、あらゆる可能な措置を講じる。専門家は、これによって10年代終わりまでに60万人以上の雇用が支えられると考えている」と述べている。

--現在、米国大統領選が終盤に差し掛かっていますが、両候補のエネルギー政策の違いは何でしょうか。

民主党のオバマ大統領は環境保護団体が重要な支持層であるため、環境保護と資源開発の両立を訴えている。また、クリーンエネルギーの開発や天然ガス車の促進をエネルギー政策の柱に据えている。

 

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