米国の経常収支は改善へ 米国シェール革命と日本《2》

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一方、共和党のロムニー候補は、自国にあるエネルギー資源を最大限活用すべきだとエネルギーの独立を主張し、排出権取引関連法案に反対している。環境関連の法案に関しては州政府に任せるべきとの考え方。比較すれば、共和党のほうがエネルギー政策には積極的と言える。

オバマ大統領は現在、天然ガス輸出規制の承認を事実上ストップしているほか、環境保護団体への配慮もあって、カナダからオイルサンドを輸入するためのキーストーンXLパイプラインについては環境面から不承認としている。ただ11月の大統領選が終わって再選となれば、積極的に資源開発に力を入れていく可能性は高いと思われる。

--天然ガスの輸出規制は日本にも関わりますが、どうなるのでしょうか。

米国の天然ガス法によると、天然ガスの輸出は国益にかなわなければならないと定められている。自由貿易協定(FTA)締結国であれば国益にかなうとして、比較的簡単に認可が下りる見通し。一方で、日本を含めてFTAを締結していない国に対しては、厳重に検査をしたうえ判断するとの方針を示しており、とりわけ大統領選前の今はFTA非締結国には承認が下りにくい状態にある。ただ、選挙が終わればパイプライン計画と同様、多少は活発化してくるのではないかと見ている。

■日本の天然ガス輸入価格は原油と連動続く

--対日輸出が始まれば、日米の天然ガス価格も収斂に向かいますか。

短期的には難しいと見ている。日本の天然ガス輸入価格は原油価格に連動する長期の契約形態を採っており、この形態が変わらない限り、原油価格の水準から大きく下がることはないだろう。契約形態を変えるには輸出国に対して消費国が交渉力を高めることがカギとなるが、上流(資源開発)権益への参画や調達地域の多角化を進めることが必要だろう。

ただ、米国のシェール革命は世界のエネルギー市場に大きな影響を与えている。カタールは米国向け輸出拡大を前提にLNG生産設備を増強していたが、米国が天然ガス輸入を減らしたことで、欧州向けを増やしており、それが(ロシアからの輸入が多かった)欧州における天然ガス価格の低下につながっている。いずれそうした価格低下の波が回り回って日本にも来るとは思うが、まだ時間がかかりそうだ。

 

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