日本の観光・航空産業は成長余地に恵まれている--IATA事務総長兼CEO トニー・タイラー

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--IATAはそうした取り組みにどう絡んでいくのでしょうか。

われわれの役割は、一つのエアラインができない業界横断的なスタンダードを確立し、業界の効率性を上げることだ。過去の例では、eチケットへの移行はIATAが主導した。紙の航空券に替わる電子チケットの導入でエアラインや顧客はメリットを得た。いま取り組んでいるのは航空貨物での紙チケット撤廃、空港におけるセルフチェックイン、セルフドキュメントチェックなどだ。

JALの再生は驚異的 倍増の余地ある日本市場

--世界のエアラインが低利益率に苦しむ中で、先日スピード再上場を果たしたJALは10%以上の営業利益率と突出しています。海外からはJALの再生はどう映りますか。

JALの回復は本当に驚くべきスピードと強さだった。確かに経営陣はすばらしい仕事をした。ただ重要なのは将来のことだ。ようやくJALはANAと同じ土俵で競争ができるようになったが、競争が激しい中で国内だけでなく海外でも競争力を維持していくのは大変なことだ。

--JALの収益回復力があまりに強かったため、ANAは公的資金を注入された企業の公正競争ガイドライン作成を政府に求めています。

ANAの気持ちは理解できる。しかし多くの国には破綻した企業を救済する各国独自のプロセスが存在する。最近ではチェコのエアラインが国の資金注入を受けることになった。重要なのは、過去に起きたことは起きたこととして認識し、将来をどうするかだ。JAL、ANAの2社がフェアで公平な形でチャンスを与えられることが大切だろう。日本の航空市場は世界3位と巨大であり、2社を支える需要は十分にある。

--現在、羽田空港の発着枠配分が議論されていますが、ある人はANAに傾斜配分するのがフェアと言い、またある人は発着枠配分は公的資金注入とは別の議論であり、JALにもANAと同様の配分を行うのがフェアだと言っています。どちらが本当のフェアなのでしょうか。

簡単に答えの出るものではありませんね。ミクロ的には羽田の発着枠配分という問題だが、大きな視点で見れば、どちらの運航計画が日本全体にメリットをもたらすかという問題でもある。どちらの観点で見るかによってフェアの意味は変わってくる。実際にはどのルートに発着枠が必要か、各社の運航計画はどうなっているかを総合的に見て判断することになるだろう。

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