新生ファミマ、看板統一で不安募る取引業者 ユニーとの9月統合に向けて浮かぶ難題

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一方で、「店舗数が増えるのでチャンスと捉えている。2016年9月の統合を待たずとも、今から増産対応を検討していきたい」と意気込むのは、ファミマ向けの既存ベンダーだ。統合を見据えて、能力増強に向けた投資に前向きな姿勢を見せる。

新生ファミマとしては、日販(1日あたり1店売上高)で10万円以上の差をつけられるセブンに対抗するため、さらなる商品力の向上は不可欠。質・量ともにレベルアップした中食供給体制を構築できるかは、統合に向けての大きな課題だ。

 「総合スーパーは温泉にしてしまえ」

統合に際してはもう一つのハードルがある。ユニーが抱える総合スーパー(GMS)の再建である。画一的な商品を販売する大量消費社会に成長を遂げてきたGMSだが、市場が成熟化した今、専門性の高い品ぞろえを求める顧客の嗜好変化に応えきれず、苦戦する運営企業が目立つ。

ユニーも例外ではない。前2016年2月期のGMS事業の部門営業利益は96億円と前期比6.7%増えた。暖冬で衣料品は苦戦したものの、生鮮品が好調だった。一見順調に見えるGMSだが、過去を振り返れば、2012年2月期の部門営業利益は181億円。2013年2月期の同142億円、2014年2月期の同122億円と比較しても、利益水準が回復しているとは言いがたい。

「GMSは温泉にしちゃえ」と話すファミマの上田会長(撮影:梅谷秀司)

新たな統合会社の社長に就任するファミマの上田準二会長は、「GMSを知らないわれわれから見たときにこそ、お客様視点のよい知恵が出せる」と強調する。その解決策の具体例として、「GMSを温泉にしてしまえばいい。3階も宿泊施設にして、浴衣を着ながら商品を見ればいい」(上田会長)と話す。

もちろん、それを具体化するのは、容易なことではない。上田会長が示すのは、あくまで改革の考え方の一例に過ぎない。その先にあるのは、それぐらい発想を切り替えてGMS改革に臨まなくてはならない、という危機感だ。「(GMSは)あれだけの大施設、それが見合った人が集まる場所にしていく」(上田会長)。

4月7日にはセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が”電撃引退”を発表したばかり。体制の転換点を迎えるセブンを追撃するためにも、ファミマ・ユニーとしては、ベンダーをはじめ取引先の再構築や、GMSの再建を進めなくてはならない。5月下旬の株主総会後からの施策が、統合の成否を左右する。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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