甘い訴訟対策は命取り、サトウは第2次訴訟で再逆転狙う 「切り餅訴訟」が残した教訓
訴訟は先行逃げ切り型、かつ100対0で勝つ気で臨め--。法廷闘争に強い弁護士が必ず口にするセリフである。差し馬型でしかも6対4くらいで勝てればいい、などとのんきに構えていては、とんでもない不本意な結果が待ち受けている。その好例となるのが、いわゆる「切り餅訴訟」である。
切り餅の表面に加えられたスリット(切り込み)の特許をめぐる、切り餅業界最大手・サトウ食品工業と、同2位・越後製菓の訴訟で、最高裁判所は9月19日付で、サトウ食品側からの上告を棄却、上告受理申立を不受理とする決定を下した。
これでサトウの敗訴が確定。訴訟の対象製品はすでに今年3月以降出荷していないので販売に影響を与えることはない。サトウは約8億円の損害賠償金を越後に支払うことになるが、これも2012年4月期に会計処理は終えており、現金も東京法務局に供託済みなので、サトウの財務に新たに与える影響はほとんどない(→サトウの業績見通しなど詳細はこちら)。
09年3月に越後がサトウを提訴して始まったこの裁判、一審の東京地方裁判所は10年11月にサトウ完勝の判決を出したが、二審の知的財産高等裁判所は11年9月、中間判決の形でサトウによる特許侵害を認める逆転判決を出した。
中間判決後は、損害額の審理を行い、今年3月の最終判決で知財高裁は、サトウに8億円の損害賠償の支払いと、対象製品の販売禁止、製造設備の撤去を命じる。この類の訴訟としては異例の厳しい判断が出ていた。
サトウが第2次訴訟を好機ととらえる理由
越後側はまた、今年4月27日、最高裁の判断を待たずに新たな訴訟も起こしている。今回確定した訴訟を第1次訴訟、4月27日申立の訴訟を第2次訴訟とすると、第1次訴訟では11年10月31日までの損害額しか主張していなかった。第2次訴訟では、それ以降の損害の賠償を新たに求めただけでなく、対象製品も、第1次訴訟の対象製品以外に拡大、総額19億円の賠償を求めている。
第1次訴訟で完敗したうえに、またもや訴えられたにもかかわらず、サトウ側はこの提訴を願ってもない好機ととらえている。なぜか。