東洋大学

正解のない世界で、自分の頭で考え行動する

東洋大学

東洋大学は、1887年に明治の哲学者・井上円了によって創立された約130年の歴史を持つ総合大学だ。哲学を建学の理念とする唯一の大学であり、近年では駅伝や水泳、陸上などの活躍からスポーツが盛んな大学というイメージも強い。一方で、2014年度には、我が国の高等教育の国際競争力の向上を目的に、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学を重点支援する、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援 タイプB(グローバル化牽引型)」に採択され、2017年には新学部・学科の開設を構想するなど、グローバル人財育成の取り組みを加速している。そこで、ここでは 「世界で活躍できる人財の条件」と題し、グローバル社会で活躍するために必要な能力とは何か、どうしたら育てることができるのかを全12回の連載を通して明らかにしていく。
第11回は、ネット印刷サービス事業などを展開するラクスルを2009年に創業した松本恭攝社長と、東洋大学・国際地域学部国際地域学科の荒巻俊也教授が対談。東洋大学が2017年度に設置を構想するグローバル・イノベーション学科のテーマとなる、イノベーション力やグローバル人財のあり方について語っていただいた。

 

ラクスル 代表取締役
松本恭攝
1984年生まれ。慶應義塾大学卒業後、A.T.カーニー入社。M&Aや新規事業、コスト削減などに従事する中で印刷業界の課題解決によるビジネスの可能性に手応えをつかむ。2009年、全国の印刷会社をネットワーク化し、各社が持つ印刷機の非稼働時間を効率的に活用するなどして、名刺やチラシなどを安く簡単に印刷発注できるラクスルを起業

荒巻 2009年に24歳で設立されたラクスルは、2015年には資本金58億円(資本準備金含む)に増資されるなど、大変な注目を集めています。松本さんがラクスルを起業したきっかけは何でしょうか。

松本 原体験は、学生時代に、日中韓を中心とした学生による国際ビジネスコンテスト「OVAL」を開催したことにあります。大学1年生の時にかかわった当初は、まだコンセプトしかない状況で、有識者からのアドバイスは、日中韓の国際関係を考えると非常に難しい、という否定的なものばかりでした。しかしながら、実際にやってみると2003年末に日本で実行委員会が結成され、半年ほどで北京やソウルにも組織が発足、2005年にコンテストを開催することができました。評論家はやり方を知らないが、実行者なら見えていることを実現できる。そして、情熱を持って行動を起こせば、どんなに無理だと言われたこともゼロから実現できる。その楽しさ、エキサイティングさを知った成功体験が大きかったと思います。どんなに権威がある人でも言っていることが正しいとは限らない、という考えのもと、自分の頭で考えて行動する大切さも学びました。

東洋大学 国際地域学部 国際地域学科 教授
荒巻俊也
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了。博士(工学)。 専門は土木環境システム、環境創成学、持続可能システム

荒巻 おっしゃるとおり、クリティカルシンキング(批判的思考)は学生に身に付けてもらいたい重要な能力だと考えています。高校までは教科書がありますが、大学では決められた教科書はなく、教員の考え方が反映される授業で学ぶことになるので、学生が授業を通じてどれだけ物事を批判的にとらえられるかが問われます。ところで、ラクスルの事業内容は、私にはとてもイノベーティブに感じるのですが、そう感じさせるポイントはどこにあるのでしょうか。

松本 当社は「仕組みを変えれば、世界はもっとよくなる」というミッションを掲げ、印刷業やトラック物流という古いタイプの産業にインターネットを掛け合わせることで、産業構造を変えようとしています。印刷会社をインターネットでつないで、印刷機の非稼働時間に印刷してもらうことで稼働率を最適化し、大量の注文を受けて版代をシェアすることにより、高品質の印刷物を安く、早く、便利に届けます。当社の顧客25万社の大半は中小企業で、その顧客単価は1万円強と、一般的な印刷の仕事の平均単価の20分の1です。これは、インターネットで事業展開することにより、営業コストなどの固定費を削減でき、小ロットからの注文が可能になったためです。さらに、プロによるチラシのデザインサービス、ポスティングや新聞折り込みをオンラインで依頼できるサービスも用意して、中小企業の販促費を効率化しようとしています。

荒巻 海外事業については、どのように展開しているのでしょうか。

松本 当社が培ったノウハウを海外にも展開するべく、シンガポールに投資会社を設立し、アジアを中心とした海外のネット印刷サービスを手掛けるスタートアップに投資しています。海外展開においては、私たちが会社を運営するのではなく、あくまでもノウハウを提供し、現地の会社に資本参加させていただくことで、世界規模で産業構造を変え、世界をもっとよくしていきたいと考えています。

次ページイノベーションを起こせる人財とは
TOPICS
第1回 グローバル社会で必要な能力
■G&S Global Advisors Inc.
 橘・フクシマ・咲江氏
■東洋大学 学長
 竹村牧男
元ヘッドハンターが語るグローバルで究極的に求められる「インテグリティ」とは。
第2回 観光産業をリードする力
■東洋大学 教授
国際地域学部国際観光学科長
飯嶋好彦
外国人観光客に愛される国になるために、いま最も必要とされているのが・・・・・・。
第3回 プログラミング
■東洋大学情報連携学部等
設置推進委員会 委員長
坂村健
アイデアをかたちにするプログラミングスキルが、なぜ必須となっているのか。
第4回 コミュニケーション能力
■静山社 会長
 松岡佑子氏
■東洋大学 文学部 准教授
 大野寿子
ハリポタ翻訳者が語った異文化コミュニケーションで必要なこと。
第5回 グローバル化を牽引する大学の挑戦
■東洋大学 副学長
 髙橋一男
■東洋大学 国際地域学部
 教授 芦沢真五
アジアの大学生がダイナミックに動く時代のハブ大学を目指して。
第6回 リーダーシップ
■東洋大学 教授 今村肇
グローバル時代に求められるリーダー像「対話型インタラクティブ・リーダーシップ」。
第7回 異文化理解と自文化理解
■旭酒造 代表取締役社長
 桜井博志氏
■東洋大学 文学部 教授
 石田仁志
日本酒「獺祭」が世界で評価される理由には異文化と自文化への深い理解があった。
第8回 産業界が求める人財
■リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 主幹研究員 豊田義博氏
■東洋大学 国際地域学部
 教授 芦沢真五
自らキャリアデザインを主導する「キャリア自律型人財」が求められるようになっている 。
第9回 連携する力
■前グーグル日本法人名誉会長 村上憲郎氏
■東洋大学 情報連携学部等設置推進委員会 委員長
坂村健
ITの変遷を身をもって知る二人がIoTからビッグデータ、AIまでITのいまを語る。
第10回 観光プロデュース力
■小西美術工藝社
代表取締役社長
デービッド・アトキンソン氏
■東洋大学 国際地域学部
 准教授 矢ヶ崎紀子
マーケティングの活用で、日本を訪れる観光客の満足度向上へ。
第12回 哲学的思考
■東洋大学 学長 竹村牧男
物事を深く掘り下げて考える「哲学的思考」がグローバル社会を生き抜く大きな力になる。
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東洋大学
https://www.toyo.ac.jp/