周防正行監督「ユニークな映画のつくりかた」 「なんだ、その程度か」と思ったら終わり

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映画らしい映画を作りたかった

――以前、(アルタミラピクチャーズの)桝井省志プロデューサーから、「『ファンシイダンス』の頃は製作費が少なくて、撮影現場は相当大変だった」と聞いたことがあります。『Shall we ダンス?』の大ヒットなどを経て、製作費などの面でやりやすさに違いは出てきていますか?

やりやすくなっています。『Shall we ダンス?』あたりから、現場でみんなの動きとか芝居を見ながら考える余裕が生まれてきた。その余裕は、僕の心の余裕というよりも、とにかく撮影時間、スケジュールが増えたということ。つまりはお金が増えているということです。

やはり時間に一番お金がかかるので。『シコふんじゃった。』のころまでは、毎日カット割りをきちんと決めて現場に臨んでいました。そうやって片付けていかないと、撮影が終わりませんから。『Shall we ダンス?』から徐々に余裕が出てきて、芝居を見てから撮り方を決めるようになりました。ところが、『それでもボクはやってない』の撮影時間なんて毎日9時~5時ですよ! 

『Shall we ダンス?』と違って動きが少なくて、セリフをきっちり言っていればほぼ間違いない映画だから、それで早かった。遅くなることを見越して夕飯の用意をしていましたが、「すいません。夕飯を用意してありますので、食べて帰ってください」と、撮影現場で言っていたくらいです(笑)。

さすがに今回の『終の信託』では、徹夜がありました。治療の過程を正確に、丁寧に撮影したからです。例えば胃洗浄にしても、端折らないでその過程を全部撮りました。余計なことかもしれないと思ったことでも一応撮っておきました。僕は医療の専門家ではないので、どこを撮れば、その治療過程が過不足なく表現できるのか、それを計算できませんでした。そこで、映画全体の流れを見てから編集で考えることにしたのです。

――ざらついた画面が印象的だったんですが、今回はフィルムで撮影されましたか?

今回は本当に映画らしい映画を作りたかったので、フィルムで撮影しました。撮りたいと思っても撮れなくなる時代がすぐそこに来ていますからね。照明の長田(達也)さんとも、デビュー作からの付き合いなんですが、取調室のシーンなどもいろいろ工夫してもらったりして、本当に頑張ってもらいました。フィルムを選択して良かったと思っています。

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