【産業天気図・空運】景気低迷に新型インフル重なり今期後半不透明で雨、来期前半は燃料高一巡で黒字転換し曇りへ

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 需要急落を受けて各社は資金繰りに奔走している。全日空は4~6月期(第1四半期)で増資と市中借り入れを含めて3000億円を確保。当初の年間資金調達計画をすでに達成した。

一方、日航は政府保証を含む1000億円の融資枠を確保したが、社債償還や長期借入返済が迫っており、今年末までにあと1000億円以上の資金が必要となる。この前提条件が9月末までが期限である中期経営計画内容の是非だ。国土交通大臣管轄の会議に有識者や金融機関などが加わり計画策定に協力しており、日航がどこまで踏み込めるかが焦点となる。

9月15日の有識者会議では日航から11年度までの3年間で国際・国内線の50路線廃止やグループの1割強に当たる6800人の人員削減が示されたが、金融機関などからは「実効性があるか不透明」との声が出ている。また、世界最大手の米デルタ航空、同2位の米アメリカン航空との提携交渉入りも説明。共同運航などでコスト削減につなげたい考えで、西松遙JAL社長は「10月半ばくらいがデッドラインだろう」と話している。ただ、新政権である民主党の出方も不透明だ。これ以上の政府支援には疑問視する声も出ており、日航再建は予断を許さない状況だ。

来11年3月期は経済回復と新型インフルの影響緩和で、旅客需要も回復が見込めそうだ。それに加えて、今期在庫ヘッジが高止まりしていた燃油費が、足元の相場下落を受けて大きく下がる見通し。これまでの燃油高で各社とも最大の費用圧迫となっていたため、下落効果は大きく、来期の黒字転換は必至だ。また、人件費など経費削減も過去最大規模で実施中であり、固定費率は相当下がることが予想されている。10年3月には成田空港で年2万回増の能力増強、同10月には羽田空港に4本目の滑走路も完成し、再浮上を狙うことになる。

(冨岡 耕)

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