金本兄貴への期待が堂々の便乗商法を生んだ 新監督の革新力は、焼肉のタレにも乗り移る

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「いやいや、そんなものではない」と言うのは、大阪学院大学院教授(元りそな総研会長)の國定浩一さん。「虎エコノミスト」の異名を持つ、熱狂的阪神ファンのセンセイです。「阪神の活躍は、関西の地盤を持ち上げ、全国の中小企業に勇気を与え、ひいては個人の勇気につながり、新たな商品やビジネスを生み出していく」と仰います(『阪神ファンの経済効果』2002年・角川oneテーマ21)。

そして「その効果は16年間生き続けるのである」と締めくくられています。この本が執筆された2002年当時、阪神は16年間優勝から遠ざかっていたのですが、それを「経済効果が16年間続く」と言い切るあたりが、まさに阪神ファンです。

反権力、反巨人を標榜していますが、阪神ファンは、決して本気で喧嘩腰ではなく、どこかにこうした「遊び心」があるのです。テレビを見る前に「阪神、負けとるやろな」とつぶやいてからスイッチをつけ、リードしていようものなら喜び爆発、負けていても「しゃあない」と受け入れる度量があります。「負けて当然、買ったら儲けもの」この気持ちが、ユーモアを生むのです。

金本監督の超変革が中小企業に乗り移る

そして今年の阪神、どこか違います。國定氏の本が出た翌年の2003年、広島から移籍して阪神を優勝に導いたのが、金本選手でした。今や、能見・藤波の両エースやベテランの西岡・福留選手、そしてリーダーの鳥谷まで、みんな、金本兄貴の明るさに引っ張られている感じです。

就任以来、金本新監督がアピールされているのが「超変革」。連日、スポーツ紙にはこの超変革の文字が躍っています。普通の改革や変革では駄目、超のついた変革をせんとアカンと呼び掛けています。キャンプ地の練習風景を見ても、今までの監督とは明らかにムードが違います。

選手の起用を変えたり、チーム組織をいじるような小手先だけの変革には超はつきません。球団と選手の上っ面だけを変えるのではなく、野球に取り組む意識、気持ちなど、根本的姿勢を変えようとされているのです。

実は、日本の経済界も同じです。年初来の株安、中国経済の行方、石油価格の低下、マイナス金利と大変化の時代に入っています。この経済の流れに乗っていかないと、今後、企業の発展はないでしょう。会社と社員も、金本タイガースのように超がついた変革をしていかんとあきません。

キンリューフーズの社長さんは、いち早く、金本監督の超変革の流れに乗り、会社を変革しようとされているのです。営業は、金本監督のブランドを活用することで、商品が各段に売りやすくなったと言います。

でも、それだけではありません。直接営業をしない本社の事務職の方も、「金本新監督の明るい鉄人パワーで、うちも元気が出そう!」と、テンションが一気に上がっているそうです。会社全体にパワーが漲(みな)ぎっている感じです。

阪神タイガースが良いスタートを切って連戦連勝すれば、「兄貴の力」もえらい勢いで売れるでしょう。そうなると、社内のムードもさらに明るくなり、社員の気持ちも「うちの会社のタレはイケるで! 一発やっタレ」となります。金本新監督の活躍で、社内の変革も一気に進む勢いです。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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