「パスワード管理ソフト」はどれだけ有効か 3つの人気サービスを試してわかったこと

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何かのサイトにログインするときは、ブラウザにあるワンパスワードのアイコンをクリックするか、スマホでアプリを開いてマスターパスワードを入力し、ログインしようとしているサイトを選ぶと、パスワードがプラグインされる(マスターパスワードを何度も入力するのが嫌なら、一定時間維持できるよう設定もできる。iPhoneなら指紋でも保管庫を開けられる)。

初期費用は無料でも

私がいちばんイライラしたパスワード管理ソフトはダッシュレーンだ。とにかく質問が多すぎる。チケットウェブ(TicketWeb)で映画のチケットを買ったときは、レシートのコピーを保管庫に保管するか聞いてきた。その間ブラウザはフリーズ。おかげで一瞬ウェブチケットにアクセスできなくなった。新しいパスワードを作るとき、毎回、ダッシュレーンの自動作成機能を使いますか、というメッセージが表示されるのもわずらわしかった(私には不要な機能だった)。

ダッシュレーン社によると、メッセージが頻繁に表示されるのは、テクノロジーに不慣れなユーザーのためだという。「一般消費者もパスワード管理に関心を示すようになり、シンプルという定義も見直す必要が出てきた」と、ダッシュレーンのエマニュエル・シャリット最高経営責任者(CEO)は、あるインタビューで語っている。「我が社は、テクノロジーにうといユーザーでも使いやすいソリューション作りを心がけた」。

3つ目のパスワード管理ソフト、ラストパスは、ダッシュレーンほど煩わしくないが、新しいパスワードを作成したとき、自動的に検知できないことが多かった。このため私は、新しいパスワードを保管庫に追加する作業を主導でやらなければならなかった。

3つのソフトはどれも、スマホやタブレットやコンピューターなど複数のデバイスで保管庫をシェアする機能がある。ソフトによって違いが出るのはここかもしれない。

ダッシュレーンは初期費用は無料だが、複数のデバイスで使えるクラウドサービスを利用するには年間40ドルがかかる(だがこの機能を使いたくないユーザーなどいるだろうか)。ラストパスも初期費用は無料で、複数のデバイスでサービスをシェアするには年間12ドルかかる。

ここでもワンパスワードは、料金に対して最もサービスが充実している。50ドルを1度だけ支払えば、主要サービスを利用できるライセンスが得られ、iPhoneでもアンドロイドのスマホでも無料で使うことができる。ソフトウエアライセンスのシリアル番号を保存するといった追加機能には、10ドルの料金がかかる。

もちろん、パスワード管理サービス自体がハッカー被害にあう可能性はある。ラストパスは昨年、ネットワークがハッカーの侵入に遭い、ユーザーのメールアドレスやパスワードリマインダーへのアクセス権が奪われた。

だったらパスワード管理ソフトなんて使っても意味ないのでは――。そう思う人がいたとしても無理はない。そういう人には、ソフトに代わる「ローテク」な管理方法があると、グロスマンは語る。パスワードを紙に書き留めて、そのメモを安全な場所に置いておくことだ。これならもちろん料金はタダだ。

(執筆:Brian X. Chen記者、翻訳:藤原朝子)

© 2016 New York Times News Service
 

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