400万台に代わるマジックナンバーはない ゴーン社長、EVの“一発逆転”シナリオを語る

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――米国の市場が回復し、危機以前の水準に戻るのはいつだと思いますか?12年までは戻らないという観測もいくつか出ています。

いつ米国が回復するかと、いつ米国が危機の前のレベルに戻るのかは別の問題です。市場の回復が始まるのは、今のすべての指標を考慮すると今年12月~10年1月になると思います。これは、景気後退が2年間に及んだことを意味する。大恐慌以来の平均景気後退期間をご存じですか?9カ月です。もう一つ、米国の景気後退期の平均GDP減少率は2%ですが、今は6%になっている。今回の危機がかなり深刻であることがわかります。

以前の市場規模は1600万~1700万台でしたが、今はもう990万台の水準まで落ちている。大きな乖離があります。実際に元に戻るのは、そうですね……。わかりませんね。ただ12年より前は無理だと思います。実際、欧州で1993年の景気後退が起こったとき、新車販売がそれ以前の水準に戻るまで7年かかった。米国で12年に危機前の水準に戻ると見るのは楽観的でしょう。

微調整は必要だが、日産のキャパは問題ない

――現在、業界全体の生産能力は4割過剰です。日産が工場閉鎖を選択する可能性はありますか。

グローバル市場はそもそも07年に6800万~6900万台の水準で、業界全体ではそれ以上生産できる能力がありました。そして今や5400万台まで市場は縮小している。どのメーカーも生産能力は過剰です。今の水準ではなく、将来の予測に基づいて生産能力を考えなければなりません。

私たちには、生産能力の問題はありません。短期的には市場が縮小していますから、過剰です。ただ、3~5年後を見通した場合、今のスランプ状態から脱却して市場が回復したということであれば、ほとんど過剰能力はないと思っています。

まあ、一部で微調整は必要ですよ。ただそれは別に工場を閉鎖するということではない。特に今後も新車を多く投入していきます。グローバルエントリーカー、さらに電気自動車も投入しますし、バッテリーの生産も必要です。それを既存の工場の中でやっていくわけです。

――今年5月の08年度決算発表会で、「今の経営環境が変わらなければ、日産が赤字を脱出するのは10年度の第4四半期」と発言されました。今もそれは変わりませんか。

変わりません。まず、09年度の日産の業績は08年度よりもよくなるという予測は変えません。とはいえそれはベターになるだけで、グッドとは違う。好業績になるわけではありません。日産が黒字化するのはご指摘のとおり、2010年の第4四半期あたりでしょうか。

今の金融危機を鑑みると、すべての自動車メーカーはキャッシュを徹底管理しなければならない。在庫を減らし、投資を抑制しています。私たちも投資の取捨選択をしました。優先順位の高いものは、電気自動車です。これは延期なし。もっとリソースを追加したぐらいです。同様に優先順位が高いのは、新興諸国の生産能力。サンクトペテルブルクは予定どおり立ち上がった。インドのチェンナイ工場も操業開始は来年です。モロッコのタンジールプロジェクトも予定どおり進めていく。新しい小型車プラットホームの車両投入も優先順位が高い。これはグローバルエントリーカーと呼ばれるものです。

ただ、ほかのプロジェクトについては、一部延期する。その一つは、超低コスト車(ウルトラ・ローコスト・カー、ULC)。これは、インドのバジャジ社(2輪大手)やその他のパートナーとインドで取り組んでいきますが、若干延期しました。

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