大統領選で変わる? アメリカの対中政策

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日本にとっても米中関係は重要

 かつて私は知人から、「中国は13カ国と国境を接しており、東シナ海を挟むと日本と韓国も含め計15カ国と国境を接している。この状況を理解すべきだ」と言われたことがあります。15の国に囲まれ、アメリカやヨーロッパと対峙する中国は、したたかにならざるを得ないのでしょう。

 こうした中国の外交姿勢のしたたかさは、各方面で垣間見えます。例えばアメリカの六カ国協議における北朝鮮への対応も、アメリカの中国に対する配慮が大きく関係しているようです。また米中戦略対話の進展などを見ても、アメリカが中国に歩み寄りつつあるのは間違いないと言えます。先日、私は中国・大連に行ってきましたが、そこで日系企業の幹部から、「大連にインテルが巨大工場を作ることが決まった。大連政府はますますアメリカ企業寄りになり、日系企業には様々な嫌がらせを行っている」と聞きました。この話を聞いて、こうした巨大投資を促す取り決めでもできないものかと感じました。

 アメリカ産業の中国への依存度はますます高まっています。米国商務省の統計によると、アメリカの在中国子会社(過半出資)の売上高は1999年と2004年を比較すると3倍、純利益は6.7倍と大幅に増えています。アメリカはそうした中国に対して“実を取る方向”に向かいつつあります。例えば07年12月11日には、アメリカ商務省ガティアレツ長官とアメリカ通商代表部シュワブ代表が中国国務院呉儀副総理(副首相)と、米中合同商業貿易委員会(The U.S.-China Joint Commission on Commerce and Trade =JCCT)で交渉し、知的財産権保護、市場アクセス、農業解放などで合意しました。このようにわが国も、アメリカと連携しながら中国と交渉することが必要になるはずです。

 私は、日本は中国に対して、アメリカと連携しながら交渉するスタンスを取るべきだと考えています。知的財産権の保護、投資条約によって進出した自国企業の保護、非関税障壁の引き下げなど、日米で取り組むべき課題は数多くあります。しかし、米中2国間での取り決めだけで動いていると、上記の大連の話のようにアメリカ企業だけが優遇され、日系企業が差別される可能性も出てきます。アメリカがどのような対中スタンスを取るかは、日本企業に大きな影響を及ぼすのです。

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