【産業天気図・自動車】「GM破産」の巨大ハリケーン発生。小康状態は一転、大荒れの予感

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 (2)についても同様だ。クライスラーは約3200ある販売店を4分の3に、GMに至っては約6000店を最大4割にまで縮小する計画だ。米国の販売店は広い敷地で複数のメーカーを扱うため、日系含め他のメーカーにも影響は及ぶ。ただしこれも部品と同様、破たんリスクの高いディーラーからは担保=在庫を引き上げ取引を縮小しているはずで、単純な債権回収途絶は多くないと思われる。
 
 ただその過程で、売り上げはますます細っていく。上記(3)の消費マインドの冷え込みも併せ、米国の新車販売台数の急激な回復は一層遠のく。ついこの間まで「ピークだった2007年レベルに戻るのは遅くても12年」という見方が大勢だったが、今や12年回復説は「ベスト・シナリオ」(日系メーカー幹部)になってしまった。

日系メーカーは昨秋からの急激な減産により、ようやく在庫を適正水準に戻しつつある。今09年度は上期こそ減産ロスの発生で赤字だが、生産量が底打つ後半は収益を急激に回復させるシナリオだ。その前提は米国市場が「1000万台前後」(トヨタ)、「1050万台程度」(ホンダ)。現状ではこれらの見立てが当たるのは五分五分というほかない。

100年に1度の経済危機にあっても、電機メーカーと異なり、自動車各社は国内工場の閉鎖に踏み切っていない。言い換えれば過剰生産能力が放置されている。米国市場が再び活気づくことを信じて、止めた機械に油を差しながら待ち続けているのだ。しかし“復活の日”が遠ざかれば、オーバーキャパシティーは必ず問題になる。日系メーカーが抱え込んだ5番目のリスクはとてもやっかいだ。

(高橋 由里)

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